セクハラ・パワハラ52 コンビニ店員へのセクハラ行為と停職処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コンビニエンスストア店員へのセクハラ行為を理由とする停職処分が適法とされた判決を見てみましょう。

A市事件(最高裁平成30年11月6日・労経速2372号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の男性職員であるXが、勤務時間中に訪れた店舗においてその女性従業員に対してわいせつな行為等をしたことを理由に、停職6月の懲戒処分を受けたが、同懲戒処分については、処分事由の一部に該当する事実がなく、また、処分の量定において裁量権の範囲の逸脱ないし濫用があるから違法であると主張して、同懲戒処分の取消しを求める事案である。

原審は、Xの請求を認容した。

【裁判所の判断】

原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。

Xの請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 公務員に対する懲戒処分について、懲戒権者は、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をするか否か、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される。

2 原審は、①本件従業員がXと顔見知りであり、Xから手や腕を絡められるという身体的接触について渋々ながらも同意していたこと、②本件従業員及び本件店舗のオーナーがXの処罰を望まず、そのためもあってXが警察の捜査の対象にもされていないこと、③Xが常習として行為1と同様の行為をしていたとまでは認められないこと、④行為1が社会に与えた影響が大きいとはいえないこと等を、本件処分が社会観念上著しく妥当を欠くことを基礎付ける事情として考慮している。
しかし、上記①については、Xと本件従業員はコンビニエンスストアの客と店員の関係にすぎないから、本件従業員が終始笑顔で行動し、Xによる身体的接触に抵抗を示さなかったとしても、それは、客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり、身体的接触についての同意があったとして、これをXに有利に評価することは相当でない。
上記②については、本件従業員及び本件店舗のオーナーがXの処罰を望まないとしても、それは、事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される
さらに、上記③については、行為1のように身体的接触を伴うかどうかはともかく、Xが以前から本件店舗の従業員らを不快に思わせる不適切な言動をしており(行為2)、これを理由の一つとして退職した女性従業員もいたことは、本件処分の量定を決定するに当たり軽視することができない事情というべきである。
そして、上記④についても、行為1が勤務時間中に制服を着用してされたものである上、複数の新聞で報道され、Y社において記者会見も行われたことからすると、行為1により、Y社の公務一般に対する住民の信頼が大きく損なわれたというべきであり、社会に与えた影響は決して小さいものということはできない。
そして、市長は、本件指針が掲げる諸般の事情を総合的に考慮して、停職6月とする本件処分を選択する判断をしたものと解されるところ、本件処分は、懲戒処分の種類としては停職で、最も重い免職に次ぐものであり、停職の期間が本件条例において上限とされる6月であって、Xが過去に懲戒処分を受けたことがないこと等からすれば、相当に重い処分であることは否定できない。
しかし、行為1が、客と店員の関係にあって拒絶が困難であることに乗じて行われた厳しく非難さ
れるべき行為であって、Y社の公務一般に対する住民の信頼を大きく損なうものであり、また、Xが以前から同じ店舗で不適切な言動(行為2)を行っていたなどの事情に照らせば、本件処分が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものであるとまではいえず、市長の上記判断が、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

3 以上によれば、本件処分に裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法があるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきである。

同じ事案でも判決を書く裁判官が違えば、こうも事実の評価の仕方が変わるという典型例です。

評価は絶対的なものではなく極めて相対的なものです。

事実なんてものはどうとでも評価できるということがよくわかりますね。

親と裁判官は選べませんので、受け入れるしかありません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。