労働災害97 長時間労働と安全配慮義務違反(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、業務と自殺との間の相当因果関係が争われた事案を見てみましょう。

ディーソルNSP・ディーソル事件(福岡地裁平成30年12月17日・労判ジャーナル86号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に在籍中に死亡した亡Xの相続人らが、勤務先であるY社およびその親会社であるA社に対し、Y社らによる労務管理を受けていたXが自殺したのは、Y社らにおいて適切な業務管理をしなかったため、長時間労働により亡労働者に過重な精神的・肉体的負荷が掛かったことが原因であると主張して、主位的に、不法行為に基づき、逸失利益、慰謝料等約5060万円などの連帯支払いを求め、予備的に、安全配慮義務違反の債務不履行に基づき、上記同額の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

業務と本件自殺に相当因果関係が認められる。

【判例のポイント】

1 本件では、Xは、鬱病等の素因があり、心理的負荷に対する一定程度のぜい弱性を有していたと認められ、そして、Xは、本件自殺の直前2か月において、長時間労働等により、鬱病等の精神障害を発症し得る程度に過重な心理的負荷を受けていたこと、本件遺書において、本件未処理等を上司に報告して本件システムの開発を続けていくことに強い不安を示し、過度に自責的になっていること、業務以外に心理的負荷を与える要因が認められないことからすれば、Xは、長時間労働や納期の切迫による過重な心理的負荷に起因して適応障害を発症し、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、自殺を思いとどまらせる精神的抑制力が著しく阻害された状態で本件自殺に至ったものと認められるから、本件自殺と業務との相当因果関係が認められる

2 平成25年3月初めの時点で、Y社らにおいて、Xが長時間労働により心身の健康を損なうおそれを予見し得たことを踏まえると、Y社らには、同月3月初めの時点においてサポート要員を付与するなどの措置を講じることは可能であり、これによりXの業務を軽減していれば、同月後半の過酷な長時間労働は避けられたのであり、Y社らに結果回避可能性があったということができるところ、Y社らは、同年3月19日に至って初めて、Xにサポート要員を付することを通告し、同年4月15日にgがサポートに入るよう手配したにとどまり、本件自殺に至るまでの期間、Xの時間外労働を制限したり、定期的に休日を取得させたりするなど、Xの業務の負担を直ちに軽減させる措置を一切講じることなく、漫然と、Xを、本件自殺前1か月において180時間を超える極めて長時間の時間外労働に従事させたのであるから、Y社らは注意義務に違反したといわざるを得ない。

3 Xが、精神疾患の既往症を有していたこと、サポート要員の付与を辞退したこと、本件未処理等を行っていたことについて、民法722条を適用及び類推適用し、損害額の35%を減額するのが相当である。

本件のような長時間労働を原因とする労災事件は、訴訟になると会社側は難しい状況となります。

だからこそ、日頃から労務管理をしっかりやらないといけないのです。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。