不当労働行為221 協定破棄と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労働者供給事業の日雇労働者の月13日稼働確保協定を破棄したことが不当労働行為といえないとされた事案を見てみましょう。

上組陸運事件(兵庫県労委平成31年1月24日・労判1198号80頁)

【事案の概要】

本件は、労働者供給事業の日雇労働者の月13日稼働確保協定を破棄したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 B2営業所では、ここ数年大幅な赤字を計上していたところ、Y社は、正規乗務員の稼働率向上等を課題として収支改善に取り組んでいた。
しかし、X組合の組合員がB2営業所の業務量にかかわらず月13日以上就労していたことからすると、Y社は、B2営業所の業務量にかかわらずX組合の組合員の業務量を確保していたことになり、正規乗務員の稼働率が改善できない状況にあったと推認できる。
そうすると、B2営業所の経営状況に照らし、その収支改善のために13日確保協定を破棄したとするY社の主張には一定の合理性が認められる

2 給付金は、日雇労働被保険者が失業した日の属する月の前2月間に印紙保険料が通算して26日分以上納付されているときに支給されるところ、13日確保協定によって確保される就労日数と、給付金の支給要件を満たすために必要な就労日数が一致しており、また、X組合は、X組合の組合員の就労日数を月13日確保することで、X組合の組合員が給付金を受給できると認識していた。
しかし、同法の目的は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図ること等であるところ、13日確保協定に基づく給付金の受給は、同法が定める日雇雇用保険制度の制度趣旨から逸脱するものであったとの疑念は拭えない。このため、13日確保協定が、日雇雇用保険制度の制度趣旨に抵触する問題を内包していたとのY社の主張は首肯できる。
よって、その是正のため、Y社が13日確保協定を破棄したことには、一定の合理性がうかがえる。

3 以上のことからすると、Y社が13日確保協定を破棄したことには、B2営業所の収支改善及び法令抵触問題の是正という相応の理由があり、X組合の組合員であるが故をもってなされた不利益取扱いに当たるとはいえないので、労組法第7条第1号に該当しない。
また、X組合の存在を嫌悪し、その弱体化を企図して行われたことをうかがわせる事情は認められないので、労組法7条3号に該当しない。

上記のとおり、使用者の行動に客観的合理性が認められる場合には、不当労働行為にはなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。