不当労働行為222 労組加入労働者の大幅な賃金減額と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に加入したゴルフ場レストラン料理長の賃金を大幅に減額して支給したこと等が不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

朝日ゴルフ事件(大阪府労委平成30年7月13日・労判1198号84頁)

【事案の概要】

本件は、労組に加入したゴルフ場レストラン料理長の賃金を大幅に減額して支給したこと等が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Xの平成27年12月分以降の月額賃金の減額は、組合とY社の間に相当程度の対立関係がある中で行われ、しかも、その理由において合理性が認められず、手続においても、不自然な点がみられるのであるから、組合を嫌悪して行われたものと推認することができる。
したがって、X組合員の平成27年12月分以降の月額賃金が減額となったことは、Y社による組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に打撃を与えるために行われた組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法7条1号及び3号に該当する不当労働行為である。

2 Y社は、自宅待機命令解除後のX組合員の担当業務について、合理性を欠く理由で、調理業務と無関係で必ずしもX組合員が担当する必要のない清掃業務を提案し、組合がこれを受け入れないと分かるや、今度は、組合及びX組合員が拒否することを承知の上で、組合が既に要求として撤回したはずのマスター室勤務を提案しているのであるから、かかるY社の対応は、X組合員のレストラン料理長としての復職をあくまでも求める組合の要求に応じないための対抗策としてなされたものとみざるを得ない
Y社がX組合員をレストラン料理長の職務に復帰させず、平成28年3月1日以降の担当業務として清掃作業及びマスター室勤務の業務を指示したことは、組合員であるが故の不利益取扱いであると言わざるを得ず、労働組合法7条1号に該当する不当労働行為であるとともに、組合員を不利益に取り扱うことによって組合の活動を委縮させるものであるから、組合に対する支配介入であり、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為である。

3 X組合員が、平成28年5月19日にY社が調理部門に配置することを受諾して以降出社していないことも、自宅待機命令解除後、Y社に届出等をすることなくAで勤務していたことも、やむを得ないというべきであって、正当な理由がないとまではいえないのであるから、X組合員のこれら行為を根拠に平成28年3月1日以降の出社拒否に正当理由がないとするY社の判断は、合理性のないものであったと言わざるを得ない
以上のことを併せ考えると、本件解雇は、組合を嫌悪してなされた組合員であるがゆえの不利益取扱いと言わざるを得ず、労働組合法7条1号に該当する不当労働行為である。
また、本件解雇は、組合の存在を軽視する行為であることに加え、それによって、2名で構成する分会の分会長であるX組合員がY社の職場からいなくなったのであるから、組合に打撃を与えるものであって、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為である。

上記命令のポイント2のような配転命令は、元の業務と配転先の業務との関連性、配転命令の合理性等から不当な動機目的を認定されないように注意しなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。