Daily Archives: 2019年8月1日

セクハラ・パワハラ54 就業規則の懲戒解雇事由の適切なあてはめ(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ハラスメントを理由とする懲戒解雇の可否に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人アナン学園事件(大阪地裁平成31年2月5日・労判ジャーナル88号46頁)

【事案の概要】

本件は、教員として勤務していたXが、Y社から懲戒解雇されたが、同解雇は無効であるなどとして、地位確認並びに未払賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社が主張する本件各セクハラ行為は、学校において、生徒に対して行ったとされているものであるから、「私生活上の違法行為」には該当せず、就業規則の懲戒解雇理由に該当するとは認められず、本件パワハラ行為及び本件各セクハラ行為が、就業規則上の懲戒解雇理由に該当するということはできず、Xを懲戒解雇することはできない

2 練習時に右肩を負傷し、それがXから直接新しい技を掛けられたためであるとまでは認め難く、仮にそうであるとしても、Xが故意に暴行を加えて負傷させたと評価することはできず、当該負傷を理由に合気道部を退部したとしても、そのような選択をした結果にすぎないというべきであり、Xが、後ろ回り受け身の練習をした日に、その臀部を触ったのは、補助を行う際の出来事であるところ、性的意図をもって臀部を触ったとまで認めることはできず、「彼氏はおるん?」、「彼氏とどこまでした?」、「ちゅーした?」、「今日調子悪いけど生理?」との各発言については、全幅の信用性を認めることは困難な証言のみに依拠するものであるが、仮にこれら及び「女の子は子宮に気をつけなあかん。」との発言を行った場合に、不快に感じたであろうことは想像に難くないが、これらの発言等により、Xとしての地位を失わせる以外の何らかの処分をもって自戒の機会を与えることなく直ちに解雇にまで踏み切ることは、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、普通解雇は無効である。

上記判例のポイント1のようなケアレスミスをなくすために、必ず顧問弁護士の助言に従って手続きを進めるべきです。

同様に、上記判例のポイント2についても、弁明の機会を与えること、処分の相当性等について慎重に検討する必要があります。