不当労働行為225 パワハラに関する謝罪要求と団交の打ち切り(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

5日目にして、栗坊トマトの芽が出ました。

ここからの成長が楽しみです。

今日は、本質的でない要求事項についての団交打ち切りと不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便事件(東京地裁平成30年12月20日・労経速2382号9頁)

【事案の概要】

Y社に期間雇用社員として雇用されていた特定の労働者が加入するX組合が東京都労働委員会に対してY社が当該特定の労働者をいわゆる雇い止めにしたことが労働組合法第7条第1号の規定に違反する旨等の申立てをしたところ、都労委が本件組合の請求に係る救済の一部を許容する旨の命令をし、さらに、本件初審命令を不服としてY社及びX組合がそれぞれした再審査の各申立てについて中央労働委員会がY社の当該申立てに基づいて本件初審命令の一部を変更するとともに、その余のY社の当該申立てを棄却し、かつ、本件組合の当該申立てを棄却する旨の命令をした。

本件は、Y社が、本件処分行政庁のした本件命令のうち主文第1項(1)及び第2項が違法である旨を主張して、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

中労委命令のうち主文第1項(1)及び第2項を取り消す。

【判例のポイント】

1 X組合は、本件各団交申入れにおいて、表面上は、本件副部長発言がパワーハラスメントに当たるとして当該パワーハラスメントに対する謝罪の要求を交渉事項に挙げてはいたものの、飽くまでも本件雇止めの撤回を本質的な要求とした上で、本件第一、二回団交におけるのと同様に、本件雇止めに至る経緯の中で本件労働者に対して退職強要があったことを非難する趣旨で本件副部長発言を問題としていたものと解することが相当であって、当該謝罪の要求自体が本件団交申入れにおける本件組合の本質的な要求であったと解することはできない。これに対し、本件命令においては、本件雇止めの撤回とは別個の独立した議題として当該謝罪の要求に関する議題が認定され、この議題が本件各団交申入れにおける中心的な問題であった旨の判断がされているものと解されるが、当該謝罪の要求に関する交渉事項についてそのように捉えることは、形式的にすぎるといわざるを得ない

2 本件各団交申入れにおいて本質的な要求として挙げられていた本件雇止めの撤回の要求に係る団体交渉にY社が応じなかったことについて正当な理由がないとはいえないことに加え、本件第一、二回団交におけるY社側の出席者による本件副部長発言の内容や趣旨等に関する説明についても、本件組合側の出席者は、これを無視し、E副部長が虚偽を述べてY社に対して退職を要求したなどと断定して、そのことを追及する姿勢に終始していたと評することができるし、上記のとおり、本件各団交申入書においても、本件副部長発言についての本件第一、二回団交におけるY社側の説明等を踏まえた質問や要求などが記載されていなかったこと、さらに、本件副部長発言が本件労働者との一対一の電話におけるやり取りの中でされたものであり、録音等の客観的な証拠に基づいて議論ができるようなものではなかったことをも考慮すれば、Xが本件各団交申入れに対し、E副部長が本件労働者に対してパワーハラスメントを行った事実はない旨を回答したのみで、本質的な要求とは解されない本件労働者へのパワーハラスメントに対する謝罪の要求に係る団体交渉にそれ以上応じなかったことも、やむを得ないものということができるから、そのことに正当な理由がないとはいうことができないというべきである。

団体交渉を行うにあたって、使用者側が理解しておくべき内容です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。