賃金172 固定残業代が無効と判断される場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

18日目の栗坊トマト。成長著しい!

今日は、タクシー乗務員の未払割増賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

洛陽交運事件(大阪高裁平成31年4月11日・労判ジャーナル89号28頁)

【事案の概要】

本件は、タクシー乗務員としてY社に勤務する従業員Xが、Y社に対し、①平成25年3月22日から平成28年2月19日までの時間外労働及び深夜労働に対する未払割増賃金合計約235万円等の支払を求めるとともに、②労働基準法114条に基づく付加金約199万円等の支払を求めたところ、原判決が、①未払割増賃金合計約183万円等の支払、②付加金約95万円等の支払の限度でXの請求を一部認容し、その余を棄却したため、X及びY社がそれぞれその敗訴部分を不服として控訴した事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 A期間について、「基準外手当(1)」及び「基準外手当(2)」及び「時間外調整給」には、割増賃金の性質を含む部分があるとしても、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金の性質を含む部分とを判別することはできないから、いずれも通常の労働時間の賃金として、割増賃金の基礎となる賃金に当たるというべきであるが、他方、「祝日手当」は、Y社において「祝日」及び「公休出勤手当」は、休日に勤務した場合に支給される手当であることからすると、通常の労働日の賃金であるとは認められないから、割増賃金の基礎となる賃金に当たらないというべきであり、また、「業績給」及び「乗務手当」は、いずれも4箇月ごとに支給されるものであり、労働基準法施行規則21条5号の「1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」に当たるというべきであるから、割増賃金の基礎となる賃金には当たらない

2 B期間について、「基準外1」及び「基準外2」は、月間運送収入額の多寡に応じて、月間運送収入額ないしそのうちの一定額に一定の割合を乗ずるなどして算定されるものであり、「基準外1」及び「基準外2」は、いずれも通常の労働時間の賃金として、割増賃金の基礎となる賃金に当たるというべきであり、また、「調整給」は、A期間における「時間外調整給」と同内容のものであるから、割増賃金の基礎となる賃金に当たるというべきであるが、他方、「祝日手当」は、A期間における「祝日手当」と同内容のものであるから、割増賃金の基礎となる賃金に当たらないというべきであり、また、「休日出勤手当」は、A期間における「公休出勤手当」と同趣旨のものであるから、割増賃金の基礎となる賃金に当たらないというべきである。

3 「基準外手当(1)」、「基準外手当(2)」、「時間外調整給」、「基準外1」、「基準外2」及び「調整給」は、いずれも、出来高に応じて支払われる手当であるから、「請負制によって定められる賃金」(労働基準法施行規則19条1項6号)に当たる。

固定残業制度の運用を誤ると、一気に基礎賃金の額が上がるので、細心の注意をしなければなりません。

固定残業制度については最高裁判例及び多くの裁判例が出されていますので、それらを参考にしながら、適切に運用していくことが肝要です。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。