労働者性26 運転代行従事者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

20日目の栗坊トマト。 葉っぱの数が増えてきました。

今日は、運転代行従事者の労働者性と未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ミヤイチ本舗事件(東京高裁平成30年10月17日・労判1202号121頁)

【事案の概要】

Y社は、運転代行業などを業とする株式会社である。X1は、平成24年7月頃から平成26年3月15日まで、X2は、平成24年5月22日から平成26年3月15日まで、いずれもY社において運転代行業に従事していた。

本件は、Xらが、Y社との雇用契約を締結していたと主張して、Y社に対し、未払残業代等の請求した事案である。

Y社は、主に、Xらとの契約が雇用契約ではなく業務委託契約であると主張して、Xらの請求を争った。

原審は、Xらが労働者に当たるとはいえないと判断して、Xらの各②③の請求を棄却するとともに、各①の請求について、請求に係る元本額+遅延損害金の限度でこれを認容した。

Xらは、原判決の上記判断を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

労基法上の労働者性を肯定

【判例のポイント】

1 Xらは、就業規則と題する書面に署名押印させられ、勤務時間を定められ、職務専念義務及びY社の指示に従う義務を課せられた上、就業規則に定めのない事項は労働基準法その他の法令の定めるところによるとされていた。さらに、具体的な仕事の進め方についても、「代行本舗 社内遵守事項」が定められており、Xらは、業務遂行にあたって、仕事開始時間、待機の場所等について具体的に指示され、時間的場所的拘束を受けるだけでなく、Y社の指示に従う義務を課されるなど、Y社の包括的な指揮監督に服していた

2 具体的な業務内容である勤務シフトは、Y社側が一方的にシフト表を作成し(具体的にシフト表作成の事務を行っていたのはXらであるが、シフト表に従った勤務を命じているのはY社である。シフト表に従った勤務をできないときは、Y社の許可が必要であり、許可なしに勤務しなかった場合には、「代行本舗 社内遵守事項」によって、最高で1日2万円の制裁が科される。したがって、各月の運転代行業務について、Xらに諾否の自由があったとは認められない

3 他の代行運転者が業務委託契約書を交わしているのに対し、Xらについては、業務委託契約書が作成されていない上、Xらの業務は、他の代行運転者と異なるものであった。すなわち、Xらは、他の代行運転者よりも早く出社して、自動車を駐車場から事務所に移動させる業務、顧客を紹介する飲食店への手土産の購入などの業務、シフト表の作成業務、X1については電話番と手配業務などをしていたが、これらは代行業務に係る業務委託契約の範囲を超える業務であるというほかない。

4 Xらは、歩合報酬だけでなく、X1が電話番として勤務する以外の場面においても職務手当及び役職手当との名目で支払を受けていたこと、Y社の決算報告書において、Xらに対する支払いを業務委託料ではなく給料手当として計上していることからしても、Y社もXらとの関係を雇用関係であると理解していたとうかがわれる。
これらの諸事情を総合すると、XらとY社との関係は労働契約に基づくものというべきである。

これだけの事情がそろえば、労働者性は肯定されることはそれほど大変ではありません。

もっとも、一般的に労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。