Daily Archives: 2019年10月25日

解雇310 解雇の相当性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

64日目の栗坊トマト。写真だとわかりにくいですが、ちっちゃい実がなりましたー!

今日は、退職勧奨を拒否し、配置転換された後の人事評価が不当とされた解雇が無効等と判断された裁判例を見てみしょう。

フジクラ事件(東京地裁平成31年3月28日・労経速2388号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xを労働者とし、Y社を使用者とする期間の定めのない労働契約をY社との間で締結したXが、Y社に対し、Y社がした人事評価に基づくものとする月例賃金(加給)及び賞与の各減額が無効である旨を主張して、平成26年4月から平成28年3月までの期間に係る各減額分並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまでに生ずる商事法定利率の割合による遅延損害金の支払を求め、さらに、Y社がXに対してした同月31日付けの配転命令、同年6月1日付けの出向命令、平成29年9月22日付けの戒告及び同年12月13日付けの普通解雇がいずれも無効である旨を主張して、配転先及び出向先において勤務する労働契約上の各義務が存在しないこと、当該戒告が無効であること並びに労働契約上の権利を有する地位に在ることの各確認を求めるとともに、当該解雇の後に生ずべきバックペイとしての月例賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 回答書の受取の拒絶が問題となるところ、確かに、この行為が懲戒事由に該当する余地のない問題のない行為であるとは解し難い。もっとも、これによって重大な影響がY社ないしX2に生ずるといった事情は考え難いから、このことのみをもって直ちに解雇を基礎付けるようなものということはできない。また、この行為を含めたXの行為について本件戒告処分が行われたとしても、その後に同種の行為が繰り返されたということを認めるに足りる証拠もないから、結局、当該回答書の受取の拒絶をもってXの解雇の客観的な合理的理由とみることは困難である。

2 Y社は、障碍者の雇用義務を果たすためにX2を設立したものであり、このようなX2の業務は、障碍者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進し、もって障碍者の職業の安定を図るという障碍者雇用促進法の目的にかなう重要なものであったということができる。そして、本件出向命令が発令された旨、その設立後間もないX2では、従業員の増員や事業の拡大が予定されており、早急に取り組む必要はないとしても、社印の管理、経理・購買等の様々な分野にわたる各種の規程等を整備するなどして会社としての基盤を整備し、かつ、事業の拡大について順次検討を進めていくことが求められる状況にあったと推認することができる。そうすると、本件出向命令が発令された当時、総務・経理について相当程度の知識を有し、新規事業の立ち上げへの力の発発揮を期待することができる従業員をX2に配置する業務上の必要性があったことは否定し難いところ、XがX2について求められる知識、経験及び能力を備える者に合致した者であったと評することができる。そして、本件出向命令が発令された当時、Xがうつ病や本件通勤災害のためにその健康に大きな不安を抱えていたことから、Y社において、業務量やこれに従事する時間を調整しやすい部署にXを配置する必要性が高かったと考えられる上、Y社及びY社グループ会社の中でも、X2は、その業務量等を調整しやすい部署であったと認めることができる。したがって、本件出向命令については、業務上の必要性があり、合理的な人選が行われたということができる
また、本件出向命令が減給を必ず伴うものであったものと認めることができる証拠はなく、XがX2への勤務に伴って転居したという事実もないから、本件出向命令によってXが大きな不利益を受けたということもできない
以上によれば、本件出向命令が権利の濫用したものであるとは認めることができないから、本件出向命令は、有効であるというべきである。

解雇をする際は、行為の悪質性とともにその行為によって会社に対していかなる影響が出たのかを冷静に検討する必要があります。

また段階を踏んでいくという忍耐力を要するプロセスを十分理解しておく必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。