継続雇用制度28 継続雇用は定年前の職務内容と同じ内容でないとダメ?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年前の職務内容の権利を有する地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

アルパイン事件(東京地裁令和元年5月21日・労判ジャーナル92号50頁)

【事案の概要】

本件は、音響機械器具の製造販売等を目的とするY社を定年退職した元従業員Xが、Y社に対し、XとY社との間では、定年前の雇用契約の終了後においても再雇用されたのと同じ職務を内容とする雇用契約が存続しており、仮にそうでないとしても、Y社がXに対して定年後の再雇用の条件としてXの希望する従前と同じ職務内容と異なる職務内容を提示した行為等は違法であると主張して、雇用契約に基づき、勤務部署をサウンド設計部、職務内容を音響機器の設計及び開発とする労働条件での雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、主位的に雇用契約に基づき、予備的に不法行為に基づき、平成29年9月16日から同年10月15日までの賃金又は賃金相当損害金22万円等の支払、同年11月25日から本判決確定の日まで毎月25日限り賃金又は賃金相当損害金22万円等の支払、不法行為に基づき、慰謝料300万円等の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認等請求一部棄却、一部却下

損害賠償等請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、満60歳の誕生日以後初めて迎える3月15日又は9月15日を定年としつつ、定年後の継続雇用希望者をその定年後にA社が引き続き雇用する定年再雇用希望者を導入して、本人の意向を踏まえつつ、再雇用希望者の知識、技能、ノウハウ又は組織のニーズに応じて職務及び労働条件を設定して事前に再雇用希望者に通知し、再雇用後の業務内容、処遇条件等について了承した者を定年後再雇用するものとして、高年齢者雇用安定法9条1項2号所定の継続雇用制度を設けていることが認められるところ、Y社は、Xに、定年のおよそ2か月前、上記定年再雇用制度に基づく定年再雇用の申込みをしたが、Xは、サウンド設計部で就労することに固執して、これを承諾せず拒否したものであり、Xは、Y社が同法の趣旨に沿って設けた定年再雇用制度に基づいて提示した再雇用後の業務内容、処遇条件等に納得せず、サウンド設計部で就労することができないのであれば、Y社がXに対してした定年再雇用の申込みを承諾しないこととし、自らの判断により、これを拒否して、Y社との間で定年後の雇用契約を締結せず、そのまま、平成29年9月15日をもって定年を迎えて退職となったものであるから、同月16日以降、XとY社との間に雇用契約の存在を認める余地はない

2 XとY社との間でXの定年後に雇用契約が成立しなかったのは、Y社がXに対して定年再雇用を拒んだからではなく、XがY社の申込みを承諾せずこれを拒否した結果であること、Y社がXに対して申し込んだ定年再雇用に係る勤務場所及び職務内容が客観的に見て不合理であったとは認められないことに照らせば、XとY社との間で定年再雇用契約が成立しなかったことにつき、Y社に違法な行為があったと認める余地はない。

本件事案は、一般的に起こり得る紛争類型ですので、是非、参考にしてください。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。