労働時間58 長距離トラック運転手の手待時間と残業代請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、トラック運転手らの時間外割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

三村運送事件(東京地裁令和元年6月26日・労判ジャーナル93号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の貨物自動車の運転業務等に従事する従業員ら9名が、平成26年7月16日から平成28年8月15日までの期間に行った時間外労働等に係る労働基準法37条1項及び4項所定の割増賃金並びに所定労働時間を超えるが法定労働時間を超えない労働に係る賃金が支払われていないと主張して、Y社に対し、未払割増賃金等並びに同法114条所定の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

付加金については請求棄却

【判例のポイント】

1 休憩施設等滞在時間の労働時間該当性について、Xらは、休憩施設等において、車内で、睡眠を取ったり、飲酒したり、テレビを見たり、トラックを駐車した上でそこから離れて、飲酒物を購入したり、入浴したり、食事をとったりするなどして過ごしており、ホテル滞在時においても、トラックの確認は1日2回程度にとどまり、その他の時間は客室において携帯端末を用いてニュース記事を見たり、ゲームをしたり、テレビを見たり、飲食のために外出したりするなどしていたのであるから、そもそも積載貨物を常時監視していたとは認め難く、そして、Y社はこれらの行動を特に規制するような指示はしておらず、かえってトラック運転手の裁量にゆだねていたことからすれば、休憩施設等滞在時間は、Xらにおいて業務から解放されて自由に利用できる状態に置かれた時間であるということができるから、Xらが、長距離運行中休憩施設等に滞在する間、労働からの解放が保障されており、労働者は使用者の指揮命令下に置かれていたとはいえないから、休憩施設等滞在時間は労働時間に該当せず、Xらの長距離運行期間中の始業・終業時刻は、Y社の主張するとおり認めるのが相当である。

長距離ドライバーの手待時間は本当に悩ましい問題です。

本件では、会社が休憩施設等の滞在時間については、休憩時間と判断されています。

決してドライバー任せにせず、会社でルールをしっかり決めることが重要です。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。