賃金183 固定残業代の有効要件を満たしていないと判断される場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、早出時間と固定残業代の成否に関する裁判例を見てみましょう。

清和プラメタル事件(大阪地裁令和元年8月22日・労判ジャーナル93号22頁)

【事案の概要】

本件は、プラスチック製品の製造、加工及び販売等を目的とするY社の元従業員XがY社に対し、労働契約に基づき、未払の時間外割増賃金等計約148万円等の支払、また、労働基準法114条に基づき、上記未払賃金のうち約84万円と同額の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 割増賃金等(固定残業代)支払の有無について、Y社は、Xに対し、平成27年4月頃、所定の始業時間(午前8時)より早く出勤する早出時間について、固定残業手当として月額5万円の「その他手当」を支給し、午後5時以降の時間を別途残業時間として算定することを説明し、その了解を得た旨主張するが、「その他手当」の名目からはその性質がわからない上、それが固定残業代であることを示す契約書や就業規則等の定めは存しないし、また、Xが平成27年5月頃に残業手当がないことについて質問していることからすると、その時点でXが「その他手当」を残業代であると認識していなかったことが窺われ、さらに、Xの労働実態に差がないにもかかわらず、平成27年3月以前の残業手当の額より同年4月以降の残業手当と「その他手当」の合計額が相当程度高くなっていることからしても、「その他手当」に従前の残業手当以外のものが含まれることが窺われること等から、Y社による割増賃金等(固定残業代)支払の主張は理由がない。

また固定残業制度の運用ミスです。

もう裁判所の判断が固まってきていますので、奇を衒わず、有効要件を意識すれば、それほど難しい問題ではありません。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。