有期労働契約89 有期雇用契約において契約更新の上限設定が有効とされる場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、雇止め無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

地方独立行政法人大阪市民病院機構事件(大阪地裁令和元年8月29日・労判ジャーナル93号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していた元職員Xが、大阪市との間で、平成24年4月1日、期間の定めのある労働契約を締結し、これを平成25年3月31日までは2か月ごと、同年4月1日以降は1年ごとに継続的に更新(平成26年10月1日に法人が設立されて以降は法人との間で更新)してきたところ、平成30年4月1日以降の契約更新を拒否されたため、Xが、労働契約法19条2号により労働契約は更新したものとみなされると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに未払賃金等の支払、また、Y社が上記更新拒絶により故意又は過失によりXの権利ないし法律上保護に値する利益を侵害したとして、不法行為に基づき、慰謝料等130万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間において、その契約上更新の回数や通算雇用期間が定められ、本件契約においては更新がないと定められており、そのため、Xがそれを超えてY社と労働契約を締結するには、他者と同様に採用募集に応募して、改めて採用試験を受けてこれに合格する必要があったことにとどまらず、X自らが課長と平成30年度の労働契約に関して協議した際、「来年度も状況が変わらず非常勤のままであれば更新しません」と述べたため、そのことをきっかけに、Y社は、労働条件を変えて(看護職員と同じ時給に上げて)手話通訳者の募集を行ったところ、Xもこれに応募して採用試験を受験したものの、Xは不合格となったところ、Xが、有期雇用職員として更新ないし再契約して無期転換しても正規職員となれないためか、駆け引きとして「非常勤のままであれば更新しません」とべた結果、それを信じたYがXの穴を埋めるためにこれまでとやり方を変えて人員募集を行い、好条件に惹かれて好成績者を含む複数の応募があり、その採用試験の結果、Xが不合格となったものであるから、その結果はX自らの言動に由来するものと言わざるをえず、そのような状況でXが本件契約の更新を期待したとしてもそれが合理的な理由があるとはいえず、本件雇止めは有効である。

2 Xが本件試験に合格できると期待したとしても、そのような期待は法律上保護に値せず、また、Y社に故意又は過失も認められないから、Xの損害賠償請求にも理由がない。

契約当初より、更新上限回数等が定められている場合には、それを超えた更新に関する期待は法的に保護されないのが原則です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。