解雇320 能力不足を理由とする解雇と訴訟における立証方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、能力を著しく欠くことを理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

豊田中央研究所事件(名古屋地裁令和元年9月27日・労判ジャーナル94号64頁)

【事案の概要】

本件は、元研究員Xが、Y社に対し、普通解雇が無効であるとして、地位確認を求め、本件解雇後の賃金及び慰謝料等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社より、本件出勤停止処分を重く受け止め、反省し、今後は職務に専念することを求める旨、Y社が指示している業務は「中研におけるCAE・シミュレーション研究の業務報告書調査」であるから指示された業務への従事を求める旨の指導を受け、その後も、複数回、同様の指導を受け、執務室で業務を実施するよう指示を受けたが、本件解雇に至るまで、指示された業務を実施する職場環境にない、職場環境を改善する必要があるので指示された業務を実施する時間はない等との独自の見解により、指示された業務を全く行わなかったものであり、かかるXの態度は、自らの独自の見解に固執し、Y社の指示、指導を受け入れないもので、将来の改善も見込めない状態であったといえ、他の部署に異動した場合に改善が見込まれるとも考えにくく、また、他の部署に異動した場合の改善の余地もないというべきであるから、Y社が、就業規則41条1号(研究所員としての能力を著しく欠くとき)に該当するとして行った本件解雇は、客観的に合理的な理由が認められ、社会通念上相当であり、解雇権濫用には当たらないから、有効である。

このような一連の流れについて、訴訟になった際に、立証できるように準備しておくことが極めて重要です。

口頭だけでの注意・指導では、いざというときに立証ができません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。