継続雇用制度29 再雇用拒否が無効とされた場合のバックペイの判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、パワハラ調査中の行為を理由とした専攻主任の譴責処分と再雇用拒否に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人南山学園(南山大学)事件(名古屋地裁令和元年7月30日・労判1213号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の設置するa大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年に達したXが、Y社に対し、再雇用を希望する旨の意思表示をしていたのにY社がこれを拒否したが、同拒否の意思表示は正当な理由を欠き無効であり、Y社との間で再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び平成29年4月以降毎月末日限り月額賃金75万5040円の支払を求めるとともに、無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして不法行為に基づき慰謝料500万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

Y社は、Xに対し、平成29年4月1日から本判決確定の日又は令和2年3月31日までのいずれか早いほうの時期に至るまでの間、毎月末日限り、月額63万0700円を支払え。

Y社は、Xに対し、50万円を支払え。

【判例のポイント】

1 労働者において定年時、定年後も再雇用契約を新たに締結することで雇用が継続されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合、使用者において再雇用基準を満たしていないものとして再雇用をすることなく定年により労働者の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、この場合、使用者と労働者との間に、定年後も就業規則等に定めのある再雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当である(労働契約法19条2号類推適用、最一判平成24年11月29日参照。原告が解雇権濫用法理(労働契約法16条)の類推適用を主張するのも、これと同趣旨と解される。)。
・・・本件処分がされた点を除いては、原告において、定年時、再雇用契約を締結し、満68歳の属する年度末まで雇用が継続すると期待することが合理的であると認められる。
・・・原告の再雇用後の給与面での待遇については、原則として、定年年齢時の俸給63万0700円は少なくとも支給され、雇用期間については、Xが満68歳に達する年の学年度末である令和2年3月31日までになるものと解される。

2 本件再雇用拒否により被る不利益は、主として、本来得られたはずの賃金という財産的利益に関するものであり、未払賃金等の経済的損害のてん補が認められる場合には、これによっても償えない特段の精神的苦痛が生じたといえることが必要と解するのが相当である。
本件処分が懲戒事由該当性すら欠き無効であること、X本人の陳述書及び本人尋問の結果によれば、Xが本件再雇用拒否によって2名の大学院生への指導を道半ばで放棄する形になったことXの研究に少なからず支障が出たことがうかがわれることに照らすと、弁論の全趣旨によれば、Xに対する懲戒処分について、D教授に対する懲戒処分の周知と同様、学生は勿論、一般の教職員にも氏名を公表されることはなかったと認められることを考慮しても、未払賃金の経済的損害のてん補によっても償えない特段の精神的苦痛が生じたと認めるのが相当である。
これまで述べた認定説示その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば、Xの精神的苦痛に対する慰謝料額としては50万円が相当である。

定年後の継続雇用の開始時点での争いです。

会社側が敗訴すると、このような結果になってしまう可能性があることを十分理解をして、慎重に判断することが求められます。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。