Daily Archives: 2020年4月1日

管理監督者43 総務人事課長の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総務人事課長の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エルピオ事件(東京地裁令和元年9月27日・労判ジャーナル95号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、所定労働時間を超える残業を行ったとして、労働契約に基づく割増賃金請求権に基づき、平成26年10月分から平成28年6月分までの間の割増賃金合計約375万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金請求として約367万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払時間外割増賃金請求は一部認容

付加金等請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xが実質的な決定権限を有していたのは、人事関係業務の一つである採用面接のうち一次面接までで採否を決することができる応募者に関する採否権限という使用者が有する人事権の一部にすぎず、その業務内容に照らしても、労働時間規制の枠を超えた活動を要請されざるを得ない重要な職務や権限を有していたとか、その責任を負っていたとまでは評価できず、また、Xがこのような実質的な決定権限を行使するにあたって労働時間に関する裁量を有していたことを認めるに足りる適切な証拠もないから、Y社におけるXの処遇が高水準であると評価できる点を最大限斟酌するとしても、Xが労基法41条2号の管理監督者であったと認めることはできない

2 Y社が割増賃金を支払わなかったのは、Xを管理監督者と認識していたためであるところ、結果としては管理監督者とは認められないものの、Xの会社内における肩書や処遇に照らすと、Y社がXを管理監督者に該当すると認識したことには一応の理由があると解され、Y社がXに割増賃金を支払わなかったことが悪質であるとは評価できないから、本件において、Y社に付加金の支払を命ずるのは相当でない。

管理監督者に関する主張を会社側で主張するメリットとすれば、付加金の支払を免除してもらえる可能性があることくらいでしょうか。

ほぼ管理監督者性は否定されますので、賃金に関する消滅時効が2年から3年、5年と延長されることを考えれば、すべての管理職の管理監督者扱いにメスを入れることを強くお勧めします。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。