解雇324 解雇が不法行為に該当する場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、解雇の意思表示と解雇予告手当等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

中村工業事件(大阪地裁令和2年1月16日・労判ジャーナル97号20頁)

【事案の概要】

本件は、土木工事業等を目的とするY社の元従業員Xが、Y社に対し、労働基準法20条1項に基づき、解雇予告手当約41万円等の支払、Y社による解雇がXの権利又は法律上保護に値する利益を侵害したとして、不法行為に基づき、慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇予告手当等支払請求は一部認容

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 解雇の意思表示の有無について、Xの賃金が毎月末日締め翌月6日払いであったことに加え、Xが平成29年4月以降平成31年3月まで毎月20日前後勤務していたこと、Y社がその間のXの労働時間・出勤状況等をタイムカードや出勤簿兼賃金計算簿によって管理していたことが認められ、これらの事実からすれば、XとY社との間の労働契約は、日雇ではなく、継続的なものであったものと認められ、そして、Y社代表者がXに対し、平成31年3月30日、「もう来てもらなくてよい」旨伝えたことによれば、Y社は、Xに対し、同日、解雇の意思表示をしたものと認めるのが相当である。

2 XがY社に対し、解雇から間もない令和元年5月29日に解雇を理由とする損害賠償請求を求める労働審判手続申立てを行っている(労働契約上の権利を有する地位の確認は認めていない)ところ、XとY社との間の労働契約が継続したのが締結から約2年間にとどまること、Xが解雇直後の平成31年4月以降、Y社以外の設備会社や友人のところで働いている旨認めていることも考慮すると、Y社による解雇により、損害賠償請求を認めるほどのXの何らかの権利又は法律上保護に値する利益侵害があったとまでは認められず、また、Y社に故意又は過失があったとも認められない

解雇の効力を争う場合に、地位確認ではなくあえて不法行為に基づく損害賠償請求を選択する理由はありません。

仮に心底復職する意思がない場合でも、要件、効果のいずれの点でも前者を選択するのが得策です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。