Daily Archives: 2020年7月10日

解雇328 問題行動を起こした従業員に対する配置転換(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、業務命令違反による解雇の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

東芝総合人材開発事件(東京高裁令和元年10月2日・労判1219号21頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、懲罰目的又はいじめ・嫌がらせ目的の業務指示に従わなかったことを理由にされた解雇は無効である等として、Y社に対し、①地位確認、②バックペイとして、平成28年2月から、毎月末日限り、31万3808円+遅延損害金、③賞与として、平成28年7月から、毎月7月及び12月の各月末日限り、48万1000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原判決は、Xの請求のうち、判決確定後の金銭支払請求については将来請求の必要性がないとして訴えを却下し、その余の請求をいずれも棄却した。

これを不服とするXが控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xが担当を命じられたマーシャリング作業については、Xの従前の担当業務と比較すると、難易度が著しく低い単純作業であると認められる。他方において、マーシャリング作業の従前の担当者(実技担当者)に多忙による業務軽減の必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。しかしながら、問題行動を起こした従業員が、問題行為の性質上、従前の担当業務を担当させられない場合において、業務軽減の必要のない他の従業員の担当業務の一部を担当させることを、その一事をもって懲罰目的であるとか、難易度が低く業務上必要のない過小な行為を行わせるものとしてパワーハラスメントに該当するとかいうには、無理がある

2 反省文には、「上に立つ方の力量のなさとしかいえない私にもどうしようもないやり方や結果が多々あり」など、Xの意見、不満をにじませた記載がある。この時点においては、Xについては、今後も組織規律を乱す言動を行いかねないという大きなリスクを抱えた人材であると評価せざるを得なかったもので、従前業務に復帰させなかった判断は誠にやむを得ないものである。また、一般教養科目の講師業務は、まさに外部(派遣元から派遣された訓練生)と直接接触する業務であって、Xに担当させないこともやむを得ない業務である。

問題行動の内容によって、配置転換(業務内容の変更)の際に今回の裁判例が参考になります。

いずれにしても問題行動の内容、頻度、指導教育内容等を証拠として残しておくことが肝要です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。