Daily Archives: 2020年7月16日

継続雇用制度30 懲戒処分歴を理由とした定年後再雇用拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、懲戒処分歴を理由とした定年後再雇用拒否を無効とした原判決が維持された事案を見てみましょう。

学校法人Y学園事件(名古屋高裁令和2年1月23日・労経速2409号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置するY大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年に達したXが、Y社に対し、(1)Y社による再雇用を希望する旨の意思表示を拒否する旨のXの意思表示が正当な理由を欠き無効であって、Y社との間で再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)当該雇用契約に基づき、同年4月1日から上記地位確認の判決確定日又は令和2年3月31日のいずれか先に到来する日までの間、毎月末日限り、賃金月額75万5040円の支払を求め、(3)無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして主張して、不法行為に基づき、慰謝料500万円の支払を求める事案である。

原審が、Xの地位確認請求を認めるとともに、賃金支払請求を月額63万0700円の限度で、慰謝料請求を50万円の限度で、それぞれ認めたところ、Y社が控訴し、Xが附帯控訴した。

【裁判所の判断】

控訴・附帯控訴いずれも棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件処分は純然たる大学内部の問題として一般市民法秩序と直接の関係を有するものではないから、司法審査は及ばず、仮に、本件処分の当否が司法審査の対象になるとしても、懲戒権者であるY社の所定機関の合理的な裁量に委ねられるべき旨主張する。
しかしながら、Xの請求は、本件処分が無効であることを前提に、雇用契約上の地位を有することの確認、同契約に基づく賃金支払及び不法行為に基づく損害賠償を求めるものであるから、民法、労働契約法等で規律される法律関係及び権利に関するものとして一般市民法秩序に直接の関係を有し、Xの単なる内部規律の問題にとどまらないことは明らかである。

2 Y社は、平成29年度の再任用が認められなかったことにより、Y大学名誉教授の称号が授与されることもなくなった旨主張する。しかしながら、本件処分が無効であって、Xについて再任用規程3条3号の欠格事由がなく、定年後も再任用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続していることは、上記に判示したとおりであるから、Xに対してY大学名誉教授の称号が授与されるかどうかは、本判決確定後にXにおいて判断されるべきものであり、現時点において、上記称号の可能性の有無を慰謝料額算定の要素として考慮するのは相当でないというべきである。

上記判例のポイント1は大学等の紛争の際に登場する論点ですが、まず認められません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。