Monthly Archives: 8月 2020

本の紹介1070 コロナショック・サバイバル(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

まだまだ長引きそうなコロナショックをいかにサバイブするのか。

暴風雨の中、いかに船を転覆、沈没させないで乗り切るかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一般社員からの目や人望を気にして、急に社員食堂で食事を始めたり、現場社員との車座行脚を始めたり、電車で通勤したりする経営者はヤバい。会社や事業の生死がかかっている、自分や家族の生活や人生がかかっている時に、社員は経営者が『いい人』かどうか、『人望』があるかどうかに関心なんて持っていない。この窮地をリアルに脱する的確な判断力、行動力、胆力のありそうな人物についていくものだ。」(62頁)

ですって(笑)

まあ確かに「いい人」で「人望」があっても、船を沈没させては船員としては元も子もありません。

波が穏やかなときは、誰でも船長は務まります。

荒波のときこそ、船長の舵取りにかかっているのです。

まさに的確な判断力、行動力、胆力が試されていると言えます。

解雇330 試用期間中の解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、試用期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

MAIN SOURCE事件(東京地裁令和元年12月20日・労判ジャーナル100号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、試用期間中に行われたY社による解雇が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金支払請求として平成30年8月以降本判決確定日まで毎月10日限り月額20万円(ただし,平成30年7月分については既払額を控除した残額である19万0480円)+遅延損害金の支払を求め、併せて、本件解雇が不法行為に該当し、また、Y社には職場環境配慮義務違反があると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、作業日報の記載方法や記載内容について説明を受けていたにもかかわらず、作業日報の問題点欄や今後の対策欄に何の記載もしなかったり「なし」とのみ記載したり、予定作業内容欄に簡略な記載しか行わないなど、Y社が求める記載方法や記載内容とは異なる方法で作業日報を作成しており、これについてBマネージャーやCからの指示、指導がされても改善されないといったことがあったことに加え、作業日報の作成時間等を巡ってY社側と意見を対立させた挙句、平成30年6月1日にはY社代表者に対して原田メソッドがXの思想良心の自由を侵害する違法なものであるから紹介をやめるよう求め、意見を聞き入れなければ訴える等と告げているのであって、BマネージャーがXの作業日報に記載しているXに対する肯定的な評価を踏まえても、Xに協調性がないとY社が判断したことはやむを得ないものといえる。
加えて、XがY社への就職内定後、Y社から借りた本件トラックを使用中に、結果として100万円以上の損害をY社に被らせた本件物損事故を起こしたにもかかわらず、事故後速やかな警察への連絡も、Y社への連絡、報告、相談も行っておらず、その後、本件トラックの損傷状況がY社に明らかになった後も、Y社からの要請があって初めて具体的な事故状況の報告を行ったり、本件物損事故の現場の調査を行っているといった不十分な対応しかとっていないことを、その後のXの作業日報に関するやりとりと併せて考えれば、Y社において大切なこととされている「報告・連絡・相談」をXが適切に行うことができないものと評価することもやむを得ないといえる。

2 Y社における業務内容が、複数の工程を限られた従業員(平成30年9月当時の従業員数は9人にすぎない)で分担して行うものであって、また、作業内容が技術的事項にわたるものであってOJTによる習熟を前提としていることからすれば、協調性や、適切な報告・連絡・相談の実施は、Y社の従業員として求められる適性であると解されるのであって、平成30年4月16日の採用内定後に発覚した上記事情によりXが上記適性を欠くと評価できる以上、Y社が留保解約権を行使することには客観的に合理的な理由が存在し、また、上記経緯に照らせば、その行使は社会通念上も相当と認められる。

3 Y社は原田メソッドの考え方をY社の経営理念、経営方針に取り入れているにすぎず、また、作業日報は、Y社従業員の作業実態を踏まえ、各従業員の作業内容及び進捗状況の確認、作業時間、作業結果等に基づく習熟度の把握、業務の効率化等の就業意識の向上等を目的として作成を義務付けられているものであり、求められている記載内容も、Y社従業員において、日々の業務において気づく力を養い、自らの技術の精度を向上させ、より質の高い製品の製作を実現するとともに、各従業員を自立型社員へと育成するためのものであって、営利企業であるY社において上記目的をもって上記記載を求めることは必要なものと言えるから、不要、困難な記載を求めるものでも、思想良心の自由を侵害するものでもない。その他に、Y社が職場環境配慮義務に違反していることを認めるに足りる証拠はない

上記判例のポイント1のような事情についてしっかり証拠化しておくことが大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1069 ポートフォリオワーカー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「『副業より複業』で幸せなお金持ちになる方法」です。

複数の仕事をしている著者が複数の収入源を持つメリットを説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・では、なぜ彼らはすぐに行動できるのでしょうか。それは、過去に、失敗を恐れずたくさんのことにチャレンジしたおかげで、膨大な失敗のデータベースと自信を得ているからです。過去の経験に基づいて『やるべきかどうか』と『やった場合の勝算』、そして『失敗したときのダメージ』を瞬時に判断できるからです。」(79頁)

瞬時かどうかはさておき、これらのことを意識、無意識問わず、比較的速やかにやるわけです。

決断力がないと、ここで右往左往します。

取れるリスクならどんどん取って挑戦すればいいのです。

10打数10安打を狙おうとするから、バットを振っていいのか悩むのです。

バットを振らないとヒットは打てません。

有期労働契約96 5年ルール適用回避と不更新条項(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

博報堂事件(福岡地裁令和2年3月17日・労判ジャーナル99号22頁)

【事案の概要】

本件は、Xにおいて、XがY社との間で、昭和63年4月から、1年毎の有期雇用契約を締結し、これを29回にわたって更新、継続してきたところ、原・被告間の有期雇用契約は、労働契約法19条1号又は2号に該当し、Y社がXに対し、平成30年3月31日の雇用期間満了をもって雇止めしたことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、従前の有期雇用契約が更新によって継続している旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金として、平成30年4月から毎月25日限り月額25万円+遅延損害金の支払、本件雇止め後の賞与として、平成30年6月から毎年6月25日及び12月25日限り各25万円+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社は、平成25年4月1日付の雇用契約書において、平成30年3月31日以降は契約を更新しないことを明記し、そのことをXが承知した上で、契約書に署名押印をし、その後も毎年同内容の契約書に署名押印をしていることや、転職支援会社への登録をしていることから、Xが平成30年3月31日をもって雇用契約を終了することについて同意していたのであり、本件労働契約は合意によって終了したと主張する。
確かに、Xは、平成25年から、平成30年3月31日以降に契約を更新しない旨が記載された雇用契約書に署名押印をし、最終更新時の平成29年4月1日時点でも、同様の記載がある雇用契約書に署名押印しているのであり、そのような記載の意味内容についても十分知悉していたものと考えられる
ところで、約30年にわたり本件雇用契約を更新してきたXにとって、Y社との有期雇用契約を終了させることは、その生活面のみならず、社会的な立場等にも大きな変化をもたらすものであり、その負担も少なくないものと考えられるから、XとY社との間で本件雇用契約を終了させる合意を認定するには慎重を期す必要があり、これを肯定するには、Xの明確な意思が認められなければならないものというべきである
しかるに、不更新条項が記載された雇用契約書への署名押印を拒否することは、Xにとって、本件雇用契約が更新できないことを意味するのであるから、このような条項のある雇用契約書に署名押印をしていたからといって、直ちに、Xが雇用契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当ではない
また、平成29年5月17日に転職支援会社であるキャプコに氏名等の登録をした事実は認められるものの、平成30年3月31日をもって雇止めになるという不安から、やむなく登録をしたとも考えられるところであり、このような事情があるからといって、本件雇用契約を終了させる旨のXの意思が明らかであったとまでいうことはできない。むしろ、Xは、平成29年5月にはEに対して雇止めは困ると述べ、同年6月には福岡労働局へ相談して、Y社に対して契約が更新されないことの理由書を求めた上、Y社の社長に対して雇用継続を求める手紙を送付するなどの行動をとっており、これらは、Xが労働契約の終了に同意したことと相反する事情であるということができる。
以上からすれば、本件雇用契約が合意によって終了したものと認めることはできず、平成25年の契約書から5年間継続して記載された平成30年3月31日以降は更新しない旨の記載は、雇止めの予告とみるべきであるから、Y社は、契約期間満了日である平成30年3月31日にXを雇止めしたものというべきである

2 Y社の主張するところを端的にいえば、最長5年ルールを原則とし、これと認めた人材のみ5年を超えて登用する制度を構築し、その登用に至らなかったXに対し、最長5年ルールを適用して、雇止めをしようとするものであるが、そのためには、前記で述べたようなXの契約更新に対する期待を前提にしてもなお雇止めを合理的であると認めるに足りる客観的な理由が必要であるというべきである
この点、Y社の主張する人件費の削減や業務効率の見直しの必要性というおよそ一般的な理由では本件雇止めの合理性を肯定するには不十分であると言わざるを得ない。また、Xのコミュニケーション能力の問題については、上記に述べるような指摘があることを踏まえても、雇用を継続することが困難であるほどの重大なものとまでは認め難い。むしろ、Xを新卒採用し、長期間にわたって雇用を継続しながら、その間、Y社が、Xに対して、その主張する様な問題点を指摘し、適切な指導教育を行ったともいえないから、上記の問題を殊更に重視することはできないのである。そして、他に、本件雇止めを是認すべき客観的・合理的な理由は見出せない。
以上によれば、Xが本件雇用契約の契約期間が満了する平成30年3月31日までの間に更新の申込みをしたのに対し、Y社が、当該申込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことから、Y社は従前の有期雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされる

上記判例のポイント1はしっかり押さえておきましょう。

これまでの裁判所の考え方からすれば、特に驚く内容ではありません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1068 おもてなし幻想(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「デジタル時代の顧客満足と収益の関係」です。

タイトルからわかるとおり、必要以上のおもてなしは収益につながらないから意味がない、という内容です。

おもてなしをすればするほどCSが上がると思われがちがちですが、実際は効果なしとのことです(笑)

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・あなたの業界でも同じような悪習がないだろうか?もしあるなら、より一層のおもてなしを積み重ねていくのではなく、どれだけ顧客の足元から不便を取り除けるか?それに目を向けなければ、『おもてなし日本』は、私たちの意図とは逆に、顧客の流出を加速させてしまうことになりかねない。」(11頁)

サービスが「お・も・て・な・し」ではなく「お・せ・っ・か・い」ではないかと考え直すいい機会ですね。

おもてなしを得意とする国ですが、この本では、それらはCSにはほとんどつながっていないということが説かれています。

自分が顧客の立場であればわかることが、いざサービスを提供する側にまわると空回りしてしまうのはよくあることです。

一度、サービスの「あ・た・り・ま・え」を見直してみてもいいかもしれませんね。

労働時間62 管理職の管理監督者該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、管理監督者該当性と変形労働時間制の適用に関する裁判例を見てみましょう。

白井グループ事件(東京地裁令和元年12月4日・労判ジャーナル99号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の亡Xの相続人らが、亡XがY社において時間外労働に従事し死亡したため、亡Xの相続人らが亡Xの雇用契約に基づき賃金支払請求権及び労働基準法114条に基づく付加金請求権を相続したとして、法定相続分に応じて、未払割増賃金元金約1700万円等並びに付加金約1171万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社は、亡Xの管理監督者性が否定される場合には、一年単位の変形労働時間制の適用があると主張するが、Y社が労働者代表との協定により定めた適用対象者は、管理職を除く一般職であって、亡Xが含まれていたとはいえないことに加え、労基法上の管理監督者と会社の職制上の管理職は別であるから、労使協定において、労基法上の管理監督者性を否定されたY社の管理職を、変形労働時間制の適用対象者に含む合意をしたものとは認められず、また、明確な合意が認められないにもかかわらず、変形労働時間制の適用対象者に管理監督者性を否定された管理職を含むものと解することは、労働者に不利益な解釈を後付けで行うこととなって、変形労働時間制の適用に当たり労使協定等の締結を要件とした労基法の趣旨を没却するものであり、不相当であるから、亡Xには1年単位の変形労働時間制は適用されない。

2 亡Xは、管理監督者に当たらないため、時間外割増賃金が発生しているが、Y社は、法人格は異なるものの、亡従業員にA運輸の運転手の労務管理等の重要な職務を行わせていたこと、Y社を含むY系列各社全体において、167名中5番目の年収で処遇していたことなどを考慮すると、Y社が亡Xを管理監督者と扱っていたことに理由がないわけではなく、割増賃金の不払が悪質とはいえないから、Y社に付加金の支払を命ずることが相当とはいえない

上記判例のポイント1は興味深い内容です。

言うまでもなく、昨今、管理職の管理監督者性が肯定される例はほとんどありません。

そのような状況においても、多くの会社で従前通り、これを肯定した運用がなされています。

賃金の消滅時効が延長されたことのほかに今回の裁判例をような不利益についても十分考慮しなければなりません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1067 儲かる10億円ヒット商品をつくる!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

マーケティングとブランディングに関する本です。

さまざまな例を挙げて、やるべきこと、やってはいけないことが説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大切なことは『何をもって記憶されたいか』です。この問いかけこそが、業界やカテゴリーにおいて記憶される企業となり、繁栄していくのです。つまり、何屋かわからない『よろず屋』がいくら商品やサービスを提供しても、誰の記憶にも残りません。」(128頁)

前回の本の紹介で書いた内容と完全に重なりますね。

「よろず屋」ではそのお店を選ぶ「何か」がないのです。

顧客に「何をもって記憶されたいか」を突き詰め、それを「わかりやすく示す」ことが大切です。

あれもこれもと要素を増やせば増やすほど「よろず屋」に近づいていき、何が売りなのかわからなくなるのです。

なんでもできるからといって、「なんでもできます」とアピールする必要はありません。

配転・出向・転籍42 退職勧奨と配転命令の関連性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職勧奨との関連性を否定され、配転命令が有効とされた裁判例を見てみましょう。

学校法人日本学園事件(東京地裁令和2年2月26日・労判1222号28頁)

【事案の概要】

本件は、学校法人であるY社との間で労働契約を締結したXが、Y社に対し、Y社がXに対してした、Y社の営繕部で勤務するよう命ずる配転命令は権利の濫用に当たり無効であるとして、Y社の営繕部で勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の支出を伴う行為の決裁権限が事務長にあること、消耗品等の発注について事務室で一元管理していること等を指摘し、営繕室での事務職員としての業務がない、事務室において対応が可能であるなどと主張する。しかし、本件学校に約600名の生徒がおり、日々本件学校の敷地内で学生生活を過ごしていること、本件学校の敷地内で学生生活を過ごしていること、本件学校の敷地が広いことなどからすれば、年間を通じて本件学校の設備等の改修、整備作業等が想定されるところ、作業自体の決裁権がないとしても、作業計画の立案、関係部署との調整を含む作業の進行管理等の業務は容易に想定されるところであるし、これを決裁権者自らが執り行うことは現実的ではない。また、支出の最終的な決裁権限が事務室に勤務する職員にあったとしても、現場における問題点や要望を把握するために、当該現場に責任ある職員を配置し、当該職員に現場の事務の改善を提案させたり、支出を申請させたりすることには十分合理性が認められるところである。そうすると、その他原告が指摘する諸点を考慮しても、Xに事務職員として営繕業務を担当させ、その勤務場所を営繕室とすることについて、なお業務上の必要性は否定し難く、Xの主張を採用することはできない。

2 E事務長は平成30年9月11日、Xに退職を勧めているが、これはXが教務室において本件学校に対する不満を口にしていたことが、他の職員の間で問題となっていたことをきっかけとするものであり、B前校長との関係を前提とした退職勧奨とはいえない。そして、同日において、Xが当該言動を否定し、退職する意思がないことを明らかにした後には、Y社からXに対し、退職を勧めた事実も認められないから、Xがその他主張するE事務長の言動を考慮しても、当該退職勧奨と本件配転命令との間に何らかの関係を認めることもできない。

配転命令については、不当な動機目的の不存在が配転の業務上の必要性の要件と表裏の関係にあります。

解雇等と比べて、会社側の裁量は広く認められますが、有効要件を意識して適切に行うことが肝心です。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介1066 「なぜか売れる」の公式(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

まさにタイトルのとおりの内容です。

なぜ『あれ』は売れるのに、『これ』は売れないのだろう。どうすれば、売れる商品、売れる店を生み出せるのだろう」(6頁)

この問いに対するヒントが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

顧客は、商品を選ぶとき、ロジカルに考えてはいません。『みんなが行っているからスタバにしよう』『CMでやっていたからコンビニにしてみよう』・・・。わかりやすいほうを選んでしまうものです。・・・自分の強み、自分の信条から外れたことはしないことです。自分がブレてしまうと、それまで贔屓にしてくれていた大事な顧客も、混乱してしまうからです。」(66頁)

そう。みんな「なんとなく」選んでいるにすぎません。

多くの人は論理ではなく感情で判断しますので、「なんか好き」というファジーな感情を否定してはいけません。

サービスの特徴を他の類似サービスと比較して、できるだけわかりやすく示すことが大切です。

あれもこれもとサービスの特徴を並べれば並べるほど、どんどんわかりにくくなり、選ばれにくくなります。

解雇329 適格性欠如を理由とする解雇が有効と判断されるためには?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、適格性欠如等を理由とする分限免職処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

大阪府事件(大阪地裁令和2年2月26日・労判ジャーナル99号28頁)

【事案の概要】

本件は、大阪府知事が、大阪府知事の職員であったXに対し、平成26年3月19日付けで分限免職処分を行ったため、Xが、大阪府に対し、本件免職処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成18年4月17日から平成24年3月31日までの間及び同年4月1日から同年9月30日までの間の勤務実績は、いずれも不良というほかなく、適格性の欠如もうかがわれる状況にあったといえる。
そして、Xが、上記期間に6か所の職場で業務を担当しており、その都度、上司らから指導や注意を繰り返し受けていたが状況はさほど改善したとは評価できないこと、Xに対して個別能力向上研修や個別指導研修が実施されたものの、Xはこれらの研修に真摯に取り組むことがなく、改善が見られなかったこと、Xは、平成25年12月9日以降、適正な手続によらずに欠勤し、また、産業医との面談に応じるよう命じる職務命令に違反している状態を解消する旨を求められ、更には本件条例6条4項に基づき、分限免職処分が行われる可能性があることの警告を二度受けておきながら、かかる状態を解消する対応をしていない
以上のXの勤務状況ないし働きかけに対する対応状況等を踏まえると、Xには、簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる蓋然性が高いと認められ、職員として必要な適格性を欠くと認められるから、本件では、地方公務員法28条1項1号及び同3号に該当する事由があるといえる。

2 Xは、長期間にわたって勤務実績がよくない状態が継続しており、研修の機会を通じて業務遂行能力の向上を図る意欲を示すこともなく、平成25年12月9日以降、適正な手続によらずに欠勤し、また、産業医との面談に応じるよう命じる職務命令に違反している状態を解消する姿勢もみせていない
本件免職処分について、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいてされた事情は本件記録上窺われない。また、本件免職処分は、上述したXの勤務実績や勤務態度を理由としてなされたものであると認められること及び複数の職場での勤務実績や研修の結果を踏まえて判断されていることを踏まえると、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されたとも解されない。
その他、本件免職処分が、二度にわたる警告を経た上で行われたものであることを併せ考慮すると、免職処分を選択する判断が、合理性をもつものとして許容される限度を超えたものということはできないから、分限処分における裁量権行使の逸脱又は濫用は認められず、本件免職処分は違法であるとはいえない。

上記判例のポイント1のようなプロセスを経ることが大切です。

根気強さが求められますが、これができるかどうかが勝敗を決します。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。