配転・出向・転籍43 職種限定契約が認められる場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、准教授の事務職員職への職種変更命令の可否に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人日通学園事件(千葉地裁令和2年3月25日・労判ジャーナル100号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が運営するY大学の法学部の元准教授Xが、Y社に対し、Xが平成25年6月4日から休職していたところ、平成26年12月1日以前に休職事由が消滅したにもかかわらずY社がXを復職させず、また同日に復職した際、Y社は、職種変更命令により准教授としてではなく事務職員として復職させたが、Xは職種を限定して採用されており、かつ本件職種変更命令に同意していないから同命令は無効である等と主張して、本件雇用契約に基づき、准教授としての地位にあることの確認、准教授委と事務職員の給与の差額賃金等の支払、人格権に基づき、e-Rad(府省共通研究開発管理システム)のXの職名等の変更等のための通知、民法709条に基づき、慰謝料1000万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

職種変更命令は無効

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社において大学の教育職員として採用時に求められる経歴や業績、事務職員等との採用手続きの採用、大学の教育職員の業務内容の専門性、特殊性、事務職員等との労働条件の相違、Y社における大学の教育職員から事務職員への職種の変更の実績等を総合すれば、XをY社の大学の教育職員として雇用する旨の雇用契約は、職種を教育職員に限定して締結されているものと認めるのが相当であり、また、XはY社から職種変更の提案を受けた際、その理由を問い質していること、Xの代理人である弁護士は、Aに対し、事あるごとに一貫してXは職種の変更に同意していない旨を伝えていたことからすれば、Xが職種の変更に同意していたとは認められないから、本件雇用契約は職種限定契約であり、Xが本件職種変更命令に明示又は黙示に同意したとは認められない。

2 本システムは、研究者の情報(経歴)が記載されるものであり、政府の関係するシステムであるため、本システムは一般的に高い信用性があると認識されているとは認められるものの、本システムは研究者の経歴を明らかにする一手段にすぎないものであり、他の手段によって研修者の経歴を証明することも可能であると認められるから、本システムに誤った記載がなされたことによりXの人格権が侵害されたとは認められず、人格権に基づき、Y社に対し、本システムの記載を正確な内容に訂正することを求めることはできない。

職種の限定の有無については、単に雇用契約書の記載内容だけで形式的に判断することはできません。

上記判例のポイント1の考慮要素は非常に参考になるので押さえておきましょう。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。