不当労働行為252 組合員の復職を認めなかったことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、休職を命じた組合員から就労が可能であるとの診断書および復職願が提出されても復職を認めなかったことを不当労働行為とした事案を見てみましょう。

学校法人神奈川歯科大学(復職)事件(中労委平成31年2月8日・労判1222号139頁)

【事案の概要】

本件は、休職を命じた組合員から就労が可能であるとの診断書および復職願が提出されても復職を認めなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 25年休職命令が発令されてからも、法人と組合との間で、Aの勤務場所、勤務内容をめぐって労使間の対立が継続していたところ、同人の復職要求をめぐって、労使間の対立が深刻化し、法人は、組合活動が活発化し、休職していた同人の復職により組合の影響力が拡大することを警戒していたことがうかがわれる。
このように緊張した労使関係の下で、法人がAから相応の医学的根拠のある一連の診断書及び復職願いが出されたにもかかわらず、25年7月1日から26年10月9日までの間、合理的な理由もなく組合及びAからの復職の要求を認めなかったことは、Aの休職を継続させることにより、同人及び同人を支援する組合の影響力を職場から排除しようとしたものであり、組合を嫌悪してなされたものとみるのが相当である。

2 法人がAの復職を認めなったことに対する救済として、初審命令は、Aに対する25年7月1日から26年10月9日までの間のバックペイ及び文書手交を命じているが、Aが提起した未払賃金請求訴訟において、27年8月6日、横浜地裁は、未払賃金の支払を法人に命じる判決を言い渡し、同判決に基づいて、法人は、27年8月14日、上記未払賃金をAの代理人であったC弁護士に支払っており、同判決は確定している。
そうすると、法人がAの復職を認めなかったことによる同人の経済的損害は既に回復されているといえ、さらに、Aが産業廃棄物管理室へ復帰し勤務していることなど本件に現れた一切の事情も併せ鑑みれば、バックペイを命じる必要はなく、文書交付のみ命じるものとする

一般的に、休職期間満了後の復職の可否の判断は、非常に難しいです。

主治医の診断書は多くの場合、「復職可」と記載されていますので、会社が、いかなる場合も例外なく主治医の診断書を鵜呑みするというわけにはいきません。

もっとも、本件では、法人と組合との対立が深刻化している状況も考慮され、結果として、不当労働行為に判断されています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。