有期労働契約98 5年ルール適用間際での雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、人員整理目的の有期労働契約の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

グリーントラストうつのみや事件(宇都宮地裁令和2年6月10日・労判ジャーナル101号2頁)

【事案の概要】

本件は、平成24年に自然環境保護を目的とするグリーントラスト運動を行う公益財団法人であるY社との間で有期労働契約を締結していた非常勤嘱託員Xが、その後4回にわたり更新を繰り返した後の平成29年4月1日に締結した期間の定めのある労働契約は労働契約法19条各号の要件を満たしており、かつ、Y社がXからの更新の申入れを拒絶することは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、Y社は上記労働契約と同一の労働条件でこれを承諾したものとみなされ、かつ、同法18条1項により期間の定めのない労働契約に転換されたなどと主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位確認及び未払賃金などを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の基幹業務を含め、ほとんどの業務について主務者ないし担当者として関与して、その内容につき精通を深め、それなりの信頼を得ていたことがうかがわれる。
Xは、本件各労働契約上は「非常勤嘱託員」として採用されたものであるとはいえ、Y社のg用務に常時従事することが可能な正規の職員が存在しない中、自らに課せられた業務量を超え、かかる常勤性に欠ける正職員に代わって、Y社の基幹業務ないしこれに関連する多くの業務に携わり、時には主務者としてその業務遂行を差配していたものということができる。
以上によると、Xの業務実態は、本件各労働契約締結のかなり早い段階から、非常勤としての臨時的なものから基幹的業務に関する常用的なものへと変容するとともに、その雇用期間の定めも、・・・当初予定された3年間(更新を含む)を超えて継続している点で報酬財源確保の必要性というよりむしろ雇止めを容易にするだけの名目的なものになりつつあったとみるのが相当である上、本件各労働契約の各更新手続それ自体も実質的な審査はほとんど行われず、単にXの意向確認を行うだけの形式的なものに変じていたものといわざるを得ない。
そうすると、・・・Xの雇用継続に対する期待を保護する必要は高いものというべきであるから、Xにおいて本件労働契約の満了時に同労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるというべきである。

2 本件雇止めは、宇都宮市の財政支援団体であるY社が労契法18条所定の期間の定めのない労働契約の締結申込権の発生を回避する目的で行われたものということができる

5年ルール適用間近での雇止めは、それだけで当該ルールの回避目的を認定されやすいということを十分理解しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。