解雇342 解雇予告手当の除外認定に関する裁判所の考え方(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、窃盗を理由とする解雇と解雇予告手当に関する裁判例を見てみましょう。

石田商会事件(大阪地裁令和2年7月16日・労判ジャーナル105号36頁)

【事案の概要】

本件は、日用雑貨、食料品、書籍雑誌、服飾雑貨、タバコ、酒類の販売等を目的とするY社の従業員であったXがY社に対し、労働契約に基づき、未払時間外、休日及び深夜割増賃金計346万3286円及び平成29年12月支給分の未払賃金5万円+遅延損害金、平成29年9月分から同年12月分の交通費等計8万9584円+遅延損害金、労基法20条1項に基づき、解雇予告手当の一部である21万9519円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、267万4781円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、5万0032円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、4万5601円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、休憩時間が60分であったと主張し、これに沿う供述(陳述書の記載を含む。)をする。しかしながら、Xが応募した求人票及びXがY社と取り交わした雇用契約書には休憩時間150分と記載されている。また、甲号証として提出されたY社の従業員であったKの陳述書では、Xの昼の休憩時間が45分から60分程度であったと記載され、X自身採用面接の際には昼休憩が60分と説明を受けた旨述べている。さらに、昼の休憩に加えて、Xがタバコ休憩をとっており、それがXの認める範囲でも2,3回、1回当たり5分から10分程度あった。加えて、Xが勤務時間に322点も窃盗を繰り返し、窃取のために閉店準備時間まで待ったり、あるいは、窃取した商品をメルカリに出品するため、多数回にわたり、勤務時間に商品の写真を撮ったり、メルカリの顧客とやりとりを行っていた。そうすると、Xの上記供述部分を採用することができず、これらの事情に照らせば、Xの休憩時間は90分、特にa店で窃取を行っていた平成29年7月以降同年12月までについては、原告の休憩時間を120分と認めるのが相当である。
他方、上記のとおり、Xは統括バイヤーとして仕入れ業務等を行っていたこと、Xが応募した求人票では、休憩時間150分と記載される一方、月平均20時間の時間外労働がある旨の記載があり、現実に150分もの休憩を取れるのかは疑問があること(Y社も求人票の記載は統括バイヤーであるXには当てはまらない旨述べる。)等からすると、上記事情やXがバックヤードでさぼっていたとのY社の指摘を考慮しても、Xが150分も休憩をとっていたとまでは認められない

2 Y社は、平成29年12月支給分の賃金減額は、統括バイヤーの解任に伴うものであるから有効である旨主張する。しかしながら、職務手当については、平成27年4月頃にも5万円の減額がされており、また、一方でY社は、職務手当の全額が超過勤務手当であるかのような主張もするなど、職務手当に役職手当に相当するものが含まれているのか、それがどの程度であるのかが判然とせず、Xが統括バイヤーから解任されたからといって、直ちに平成29年12月頃の職務手当の減額が有効であるとは認められない

3 Xは、Y社の商品を322点も窃取したことを理由として解雇されたものであるから、Xの解雇は、労働者の責めに帰すべき事由に基づくものと認めるのが相当である。
よって、Xの解雇予告手当支払請求には理由がない。

「え?除外認定受けなくてもいいの?」と思われる方もいるかと思います。

一般的には以下の規定のとおり、除外認定を受ける必要があります。

【労基法20条】
1 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない
3 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

【同法19条2項】
前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない
*「行政官庁の認定」=所轄労基署長の解雇予告除外認定
*ちなみに、20条違反は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(同法119条1号)。

しかしながら、裁判所は、本件裁判例同様、除外認定がなくても、「労働者の責めに帰すべき事由」がある場合には解雇予告手当の支払を不要と解しています。

ただし、非常に危ないので鵜呑みにしないように!!(結果、セーフだっただけですから)

事前に顧問弁護士に相談をしつつ、慎重に対応していきましょう。