Category Archives: 不当労働行為

不当労働行為306 使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性に関する事案を見ていきましょう。

一般財団法人あんしん財団(資料配布)事件(東京都労委令和3年6月15日・労判1288号110頁)

【事案の概要】

本件は、使用者が「ユニオンとは何か-その実態と対応方法-」という資料を配布し読み上げた行為の不当労働行為該当性に関する事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 各支局長が本件資料を職員に配布し読み上げて説明した行為は、社会的にも財団にとっても好ましくない存在であるとの印象を与え、組合への敵対意識を醸成するものであり、また、組合員である職員に対しては、組合への不信感を抱かせ、組合活動への委縮効果を与えるものであるから、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。

2 財団は、本件研修は、組合の違法不当な情宣活動に対抗するためにやむを得ないものであったと主張する。
しかし、組合の情宣活動に必ずしも適当とはいえない面があったとしても、それは、組合との交渉や組合への抗議、あるいは訴訟による法的手段等により解決を図るべきものであり、組合の情宣活動への対抗手段として支配介入行為が許されるものではないので、財団の主張は採用することができない。

財団側の気持ちは理解できなくはありませんが、労働組合法上のルールからしますと、上記結論自体には異論がないところかと思います。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為305 面談における支局長の発言が支配介入にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、面談における支局長の発言が支配介入にあたるかが争われた事案を見ていきましょう。

一般財団法人あいんしん財団(解雇等)事件(東京都労委令和4年10月18日・労判1288号106頁)

【事案の概要】

本件は、面談における支局長の発言が支配介入にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

支配介入にあたる

【命令のポイント】

1 B支局長が、平成29年12月25日の面談において、Aに対して「早期退職って制度があるじゃん」、「辞めても裁判って続けられるじゃん」などと発言していることからすれば、この面談では、Aに退職の勧奨を行ったとみるのが相当である。
上記面談で、B支局長は、早期退職の募集とは無関係である係属中の訴訟を引き合いに出して、退職することを促している。当時、Aら7名の配転に係る訴訟が進行し、判決言渡し(平成30年2月26日)直前であったなど、労使が対立的な関係にあったといえる。
B支局長は、所属職員の管理監督に当たる立場であり、財団の利益代表者に近接する職制上の地位にあるところ、同人の発言は、上記のように損害賠償請求事件等をめぐる対立的な労使関係を踏まえたものであるから、使用者の意を体して行ったものといわざるを得ない。
そうすると、B支局長の発言は、財団の意を体して、組合員であるAを、早期退職募集の機会を利用して排除しようとしたものということができる。
よって、B支局長の上記発言は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合員を排除することにより組合の弱体化を図る支配介入にも当たる。

組合との対立関係が生じているときに、組合員に対して直接退職勧奨をすると不当労働行為と評価される可能性が高いので注意しましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為304 コロナ禍を理由に対面での団交に応じなかったことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、コロナ禍を理由に対面での団交に応じなかったことの不当労働行為該当性について見ていきましょう。

エイ・アンド・エム事件(福岡県労委令和4年3月11日・労判1286号85頁)

【事案の概要】

本件は、コロナ禍を理由に対面での団交に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 本件において、対面による団交を行うとした場合、通常施設には出入りしていない組合側のA1委員長および会社側代理人であるB9弁護士が団交の出席者に含まれることが想定される。
そして、組合が3年1月5日付けで団交申入れを行った時点の社会情勢をみれば、福岡県内においては新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する状況にあり、それを受けて、同月14日から翌月7日までの間、緊急事態宣言が発令される状況に至っていた。
このような中、Y社が、介護を必要とする多数の高齢者が入居する施設内における新型コロナウイルス感染症の感染リスクを低減させるため、外部の者の立入り自体を制限すべきと考えることは、社会通念上不当とはいえない
また、上記の状況にあって、Y社が、高齢者の介護等に携わる施設職員が対面による団交に出席することで、新型コロナウイルス感染症に感染するリスクを考慮し、対面による実施には応じられないとしたことについては、相応に理解できるところである。
加えて、Y社は文書により一定の回答を行っている
さらに、3年3月5日、組合が処遇改善加算の支給基準を明確にすること等について団交を申し入れたことに対しては、Y社は、同月16日、書面により回答するとともに、ウェブ会議方式等による団交の実施を申し入れている
上記の事情からすれば、Y社の対応は、正当な理由なく団交を拒んだとまではいえず、労組法7条2号の不当労働行為には該当しない。

理由付け及び結論に異論はないと思います。

このような状況下において、ウェブ会議方式による団体交渉を拒否する合理的理由はないものと思われます。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為303 会社が団体交渉を拒否したといえるかが争われた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社が団体交渉を拒否したといえるかが争われた事案について見ていきましょう。

ヨコヅカ事件(栃木県労委令和5年1月12日・労判1286号83頁)

【事案の概要】

本件は、会社が団体交渉を拒否したといえるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

肯定

【命令のポイント】

1 令和3年11月4日の回答時点においてY社がウェブ会議を含むリモートでの団体交渉を提案しているということはできず、また、Y社が電話による話合いを提案しているとしても、そこに労使双方の合意や特段の事情があったとはいえない。さらに、Y社は、組合から要求事項の根拠となる証拠が提出されなければ団体交渉に応じないという態度であり、組合からの団体交渉申入れを拒否したものといわざるを得ない

2 Y社は、団体交渉を拒否したとしてもそれには正当な理由があるとして、解雇に対する事実の認識が異なること、そもそも解雇ではないのだから、不当解雇に関する内容は義務的団交事項に当たらない旨を主張している。
しかし、「解雇問題」は義務的団交事項であるから、Y社のその主張は採用できない。また、「社会保険等の未加入問題」及び「時間外労働賃金等の未払い」については、団体交渉を拒否する正当な理由があることについての主張及び疎明をしていないことから、これらについても正当な理由があったとはいえない。

上記命令のポイント1、2における使用者側の主張は、いずれも団体交渉の基本的ルールからすれば、採用されないことは明らかです。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為302 弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不誠実団交にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不誠実団交にあたるとされた事案を見ていきましょう。

辰巳事件(群馬県労委令和4年5月19日・労判1282号96頁)

【事案の概要】

本件は、会社が、弁護士事務所の人間を称する者に実質的に代理させて交渉に当たらせたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【判例のポイント】

1 会社がBにどのような権限を与えたかを明確に示さずに実質的に代理させて交渉に当たらせたこと及び予め要求書に記載された要求事項に回答できる者を出席させなかったことは、合意達成の可能性を模索する義務に反している
さらに、Bが、C社がAの無断欠勤を問題にしている等の組合の適切な判断を誤らせるおそれのある虚偽の主張を繰り返したことは、誠実な交渉態度であったとは評価し難い。
したがって、第3回団体交渉における会社の対応は、不誠実であったといえる。

2 第4回団体交渉においては、会社の代表であるDが出席しており、Bが出席していたとしてもDの権限は明確であるから、会社側の出席者に特段の問題はない。また、第4回団体交渉において、第3回団体交渉におけるBの虚偽の発言が組合の判断に影響を与えていたと評価すべき事実は存在しない。よって、第3回団体交渉が不誠実なものであっても、第4回団体交渉に問題性が継続しているとまではいえない

上記判例のポイント1は、実際に団体交渉に携わる身としては、俄かには信じがたいです。

弁護士に代理人として同席してもらうようにしましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為301 団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するとされた事案を見ていきましょう。

たくみ運輸事件(兵庫県労委令和4年9月6日・労判1280号101頁)

【事案の概要】

本件は、団体交渉における会社側の対応が不誠実団交に該当するかが争点となった事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 B1が査定根拠として説明した内容は、「収入とね。まあ売上げ。もう分かりやすく今回言うたったな、ETCの額こんだけ違いますよ。」など、客観性のない極めて曖昧なものであり、組合が考慮要素に対する計算式などの具体的な評価基準を質したことに対しても回答したことは認められず、会社は、支給基準に関し、何ら具体的な説明をしていないというほかはない

2 組合が改めて査定資料の提出を要求したことに対しても、会社は、個人情報を理由に応じておらず、自らの主張の論拠となる資料等を提示し、組合の要求及び主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明できていたとは認められない。
本件団体交渉の経緯に鑑みれば、会社は、組合に対し、本件一時金の算定に用いた相関表や計算過程が、記録・保存されていたならばその記録に基づき具体的に説明すべきであり、仮に、会社が、それらを記録・保存していなかったならば、可能な限りその内容を具体的に説明すべきであったというべきである。

3 会社の業績は一時金の支給原資に影響していると認められ、会社の業績が分かる資料を何ら示そうとしなかった会社の対応に理由があったとはいえない

4 本件一時金の交渉が継続しているにもかかわらず、会社が一方的に一時金を支給したことは、組合との団体交渉を軽視したものといわざるを得ず、不誠実な対応であったと判断する。

決算書類等の非開示の不当労働行為該当性が争点となる事案は少なくありません。

会社としてはできるだけ見せたくないと思う気持ちも理解できますが、不当労働行為と判断される可能性が高いのでご注意ください。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為300 取締役である組合員の労組法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、取締役である組合員の労組法上の労働者性について見ていきましょう。

マテロックス事件(大阪府労委令和3年5月7日・労判1275号142頁)

【事案の概要】

本件は、取締役であるD組合員が労組法3条の労働者に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法3条の労働者に該当する。

【命令のポイント】

1 D組合員の業務内容は、従業員として入社してから取締役に選任された後まで、一貫して、他の従業員と同様、工場で製品加工という現場作業に従事していたこと、少なくとも担当業務の範囲内等において、取締役としての意思決定や指揮監督する行為があったとはいえず、そのほかにD組合員が会社でどのように指揮監督していたかについても具体的な疎明はないこと、担当する業務の遂行を細かく指示されていること、からすると、D組合員はその業務遂行に当たり、会社の岸監督の下に労務の提供を行っていたとみることもできる。
D組合員は、会社から、タイムカードの打刻と打刻理由説明書の作成や有給休暇消火記録の提出を求められていたことからすると、服務態様からみる限り、会社による一定の時間的拘束を受けていたといえる。
D組合員の報酬には、労務提供への対価の要素も含まれていたとみることができること、会社通知書から、D組合員は、会社から、労務を提供しなければ減給されることも想定されていたことを勘案すると、D組合員の報酬の一部には労務対価性があったとみることができる。
D組合員は、取締役会や役員会議に出席したこと、労使会議に会社側として参加したこと、会社設備等の導入に関与したこと等は認められるものの、役員として会社経営に参画していたとまでみることはできない。加えて、会社通知書が交付された時期には、D組合員の会社における影響力は著しく弱まり、会社の経営に関与していたとみることはできない。
以上のことを総合的に判断すると、解任に至る当時、D組合員は、取締役であっても、実質的には使用人としての地位にあったとみるのが相当であり、労組法3条の労働者に該当するというべきである。

2 D組合員が組合員であることを否定し、団交申入れに応じなかった会社の対応は、組合の運営に対する支配介入であり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。

労働者性については、労基法においても労組法においても、実態を見られるという点では共通しています。

本件では、取締役ではありましたが、実質的には労働者であると判断されました。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為299 会社による退職勧奨の態様は極めて問題であるにもかかわらず不当労働行為にあたらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、会社による退職勧奨の態様は極めて問題であるにもかかわらず不当労働行為にあたらないとされた事案を見ていきましょう。

テイケイ事件(東京都労委令和4年6月21日・労判1275号139頁)

【事案の概要】

本件は、会社による①退職勧奨、②団交拒否、③組合非難・抗議の文書送付が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

①:不当労働行為にあたらない。

②:不当労働行為にあたる。

③:不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社が令和元年5月9日、組合員Cに対して退職勧奨を行った事実が認められ、退職勧奨の態様は、極めて問題であるといわざるを得ないが、かかる退職勧奨は、同人が組合員であることを理由として行われたものであるとまでは認められないことから、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、また、組合の運営に対する支配介入にも当たらない

2 Y社は、7名の組合員の自宅へ、郵送または持参投函により合計22通の文書を送付しているところ、いずれの文書にも、「お前らの出る幕は無い!」等の組合の組織、運営事項を嫌悪、誹謗中傷するものと認められる記載、「このゴミ野郎!」等の組合員個人を誹謗中傷するものと認められる記載、「プレカリに非難される謂れは何一つ無い!組合に利用されているのだ!」等の組合員に対して組合からの脱退を強く促すものと認められる記載、組合員個人に対する民事・刑事を問わず法的措置を講ずる旨の記載、組合員個人宅を訪問することを示唆する記載が認められる
また、住所を公開していない組合員の自宅に文書を郵送、持参投函する行為は、組合員をして組合活動を継続することへの極度の不安を抱かせるものであり、かかる文書の送付行為は、「組合事務所宛ての送付文書に比して、より一層組合員の間に精神的動揺を引き起こし、組合の組織や運営に影響を及ぼす危険があるものと認められ、いずれも支配介入に当たる。

上記命令のポイント2が不当労働行為にあたるのは明らかですが、ポイント1は、組合員であるが故の不利益取扱いと認定されなかったため、不当労働行為性が否定されました。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為298 使用者による便宜供与にかかる確認書(労働協約)の解約が不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、使用者による便宜供与にかかる確認書(労働協約)の解約が不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

社会福祉法人ハートフル記念会事件(神奈川県労委令和4年4月8日・労判1271号94頁)

【事案の概要】

本件は、①使用者による便宜供与にかかる確認書(労働協約)の解約が不当労働行為にあたるか、また、②組合掲示板不設置が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

①は不当労働行為にあたる

②は不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y社は、本件協約に基づく便宜供与について業務上に支障がなく、ただちに本件協約を解約すべき必要性及び緊急性といった合理的な理由がないにもかかわらず、組合と一切労使協議を経ることなく、一方的に解約するに至っているのである。
したがって、Y社が確認書を一方的に解約したことは、組合組織の弱体化の意図のもとに行われた労組法7条3号の支配介入に当たると解される。

2 組合が掲示板を設置するよう要求したことに対し、Y社は、本件協約に基づく便宜供与について実情に即した内容になるよう組合とリモート方式により協議したい旨述べている。
新型コロナウイルス感染症の感染状況、Y社が老人福祉施設を運営していること等を勘案すると、施設内での感染拡大を危惧したY社が、リモート方式での団体交渉を希望したことに一定の合理的な理由があることは否定できない。しかしながら、組合は、結審日まで、リモート方式の団体交渉に消極的であった。このことが、老人ホームCの掲示板設置問題が解決しなかった一因であることは否定できない。
したがって、老人ホームCに掲示板が設置されず、組合が掲示板を利用できなかったことが、ただちにY社の組合の運営に対する支配介入によるものということはできない。

上記命令のポイント1は特に争いがないと思います。

上記命令のポイント2は、昨今の状況を踏まえた判断ですね。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

不当労働行為297 会社による研修事業のグループ会社への事業譲渡等について組合らに通知しなかったことの不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、会社による研修事業のグループ会社への事業譲渡等について組合らに通知しなかったことの不当労働行為該当性について見ていきましょう。

サイマル・インターナショナル事件(東京都労委令和4年2月1日・労判1267号92頁)

【事案の概要】

本件は、会社による、法人語学研修事業のグループ会社への事業譲渡、同事業部門の閉鎖に伴う契約社員および業務委託講師との契約の終了について、組合らが抗議するまで組合らに通知しなかったことが、支配介入の不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組織再編後の本件労使間の経緯からすると、本件労働協約が組合支部に承継されたか否かはさておき、会社は本件労働協約の趣旨を十分に尊重した対応を執るべきであったといえ、本件事業譲渡が組合員らの契約の存続という労働条件に重大な影響を及ぼすものであったことを鑑みれば、会社は、本件事業譲渡について、従業員である組合員に通知する前又は同時期に組合に通知することが労使関係上求められていたといえる。

2 会社は、組合支部で役職を有するDに個別に通知していることから、同人から組合らに本件事業譲渡の件が伝えられるものと考えていた旨主張するが、従業員に対する通知をもって組合らへの通知に代えることはできないといわざるを得ない。

3 会社は、本件事業譲渡について、従業員である組合員に通知する前又は同時期に組合に通知することが労使関係上求められる状況にあったが、会社は、本件事業譲渡を従業員らに通知しながら組合らには抗議を受けるまで通知しなかったのであるから、会社の対応は、組合らの存在を軽視したものであったといわざるを得ない

上記命令のポイント1は言うまでもないところですが、命令のポイント2についてはしっかり理解しておかないと誤解・勘違いしてしまうかもしれませんね。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。