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改正労基法⑤(時間単位年休)

今日は、午後いっぱい、浜松で弁護団会議でした。

今、事務所に戻りました

明日、午前中に地裁浜松支部で証人尋問があるので、今日は、その最終打合せでした。

さて、今日は、「時間単位の年次有給休暇(時間単位年休)」について見ていきます。

 

【ポイント】

労使協定を締結すれば、年に5日分を限度として時間単位で年次有給休暇を付与することができる。

 

年休取得は、「仕事が忙しい」「みんなに迷惑がかかる」「職場に取りづらい雰囲気がある」などの理由から、近年の取得率が全国平均で5割を下回って推移しています。

 

改正法は、労使協定により、時間単位による柔軟な休暇取得を認め、年休を有効に活用できるようにしました。

 

以下、ポイントを見ていきましょう。

 

1 時間単位年休の取得は、あくまでも労働者が希望があることが前提です。

 

労使協定があるからといって、会社が、労働者に対し時間単位年休を取得することを強制することはできません。

 

2 時間単位年休を導入する場合、労使協定のほかに就業規則にも記載する必要があります。

 

3 時間単位年休を取得できる対象労働者の範囲は、労使協定で限定することができます。

 

4 時間単位年休は、1年に5日以内で与えることができます。

 
「5日以内」とは、法定の1年間の年次有給休暇の付与日数のうちの5日以内を言います。

 

5 パートタイマーも時間単位年休を取得することができます。

 

6 1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかについて、労使協定で明確にしておかなければなりません。

この1日の年次有給休暇を時間単位年休に換算した場合の時間数は、その労働者の所定労働時間を基礎に定めます。

1日の所定労働時間が8時間であれば8時間分、7時間であれば7時間分の時間単位年休を取得すれば、1日分の年次有給休暇を取得したことになります。
 

改正労基法④(中小事業主に対する猶予措置)

今日は、「中小事業主に対する猶予措置」についてです。

 

【ポイント】
中小事業主については、法定割増賃金率の引上げ、代替休暇に関する規定の適用が、当分の間猶予される。

 

なお、「当分の間」は、現在のところ、具体的な期間は想定されていません

 

中小企業の多くは、余剰のない限られた要員の中で業務を処理しているため、今回の改正は大きな負担となり、経営を圧迫するおそれがあります。


また、業務処理体制の見直しや新規雇用、省力化投資といった時間外労働を抑制するための迅速な対応が困難な面もあります。

そこで、改正法は、一定規模以下の中小企業については、適用を猶予しました。

 

「中小事業主」にあたるか否かの判断基準は以下の1または2で判断します。


なお、この基準は、「事業場」単位ではなく、「企業(法人または個人事業主)単位で判断します。


1つの事業主が複数の業種の事業活動を行っている場合は、その主要な事業活動によって判断します。主要な事業か否かは、過去1年間の収入額・販売額、労働者数・設備の多寡等の点から判断します。

1 資本金の額または出資の総額

(1)小売業・サービス業

5000万円以下

(2)卸売業
   1億円以下
(3)それ以外

3億円以下


2 常時使用する労働者数
(1)小売業
   50人以下
(2)
サービス業・卸売業
   100人以下
(3)
それ以外

300人以下

 

 

改正労基法③(代替休暇の付与)

今日は、「代替休暇の付与」について見ていきます。

【ポイント】

労使協定を締結すれば、「月60時間超の時間外割増賃金率の引上げ」分の支払いに代えて、有給の休暇(代替休暇)を与えることができる。

 

注意すべきなのは、代替休暇の対象となるのは、あくまで法定割増賃金率の引上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)についてであるという点です。

 

つまり、代替休暇を与えていても、従来から義務付けられている25%の割増賃金は支払う必要があります。

 

代替休暇を与える場合、労使協定を締結しなければいけません。

 

労使協定で定める事項は、

(1)  代替休暇として与えることができる時間の時間数の算定方法

(2)  代替休暇の単位

(3)  代替休暇を与えることができる期間

などです。


これらについては、就業規則にも記載する必要があります

 
それでは、1つずつ見ていきましょう。

(1)について

具体例をあげて説明します。

 
例えば、1カ月につき64時間の時間外労働をさせた場合、前記のとおり、60時間を超えた部分につき代替休暇を与えることができるので、以下の計算式となります。

(64時間-60時間)×(50%-25%)=1時間

というわけで、この場合、1時間の代替休暇を与えることができるわけです。

つまり、法定割増賃金率と同様に設定した場合、月60時間を4時間超えるごとに1時間の休暇を取得できるということになります。


(2)について

「代替休暇の単位」については、「1日又は半日」とされています。


これは、代替休暇は、労働者に休息の機会を与えることをその趣旨としているので、休暇の単位があまり細切れになると急休息の意味がなくなってしまうというのが理由です。


なお、「1日または半日」に満たない端数が出る場合があります。


この場合には、労使協定で定めれば、代替休暇と「代替休暇以外であって通常の労働時間の賃金が支払われる休暇」と合わせて1日または半日の
休暇として与えることもできます。



(3)について

「代替休暇を与えることができる期間」については、時間外労働が60時間を超えた当該1カ月の末日の翌日から2カ月以内とされています。


したがって、労使協定では、この範囲内で代替休暇を与えることができる期間を定める必要があります。

 

改正労基法②(時間外割増賃金率の引上げ)

今日は、「月60時間超の時間外割増賃金率の引上げ」について見ていきましょう。

【ポイント】
時間外労働が1か月について60時間を超えた場合は、その超えた時間について50%以上の割増賃金を支払わなければならない。

というわけです。

60時間までは、25%以上です。

今回の改正で、休日労働の割増賃金率(35%以上)についての変更はありません。

なお、「休日労働」とは、「法定休日」(1週1日または4週を通じて4日の休日)に労働させた場合をいいます。

法定休日以外の休日である「所定休日」に労働させても休日労働とはなりません。

とはいえ、所定休日に労働させたことにより週の法定労働時間(原則40時間)を超える場合には、時間外労働となります。

したがって、時間外労働が「1か月60時間」を超えるかどうかを算定する際には、この時間外労働となる時間も含めて計算する必要があります。

このことから、例えば、土日休みの週休2日制を採用している場合、土曜日と日曜日のどちらを法定休日を明確にしておくほうがいいですね。

そのほうが、休日労働の割増賃金の計算がしやすいです。

就業規則等に、「毎週日曜日を法定休日とする」などと定めておくとよいでしょう

次に、深夜労働との関係です。

時間外労働が深夜時間帯(22時~5時)に及ぶ場合、これまでは、時間外労働の法定割増賃金率25%+深夜労働の法定割増賃金率25%=50%以上の割増賃金を支払わなければならないとされていました。

これが、今回の改正により、月60時間に達した時点より後に行われた時間外労働が深夜時間帯に及ぶ場合には、50%+25%=75%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられました。

最大75%ですよ・・・

会社としては労働時間の削減を本気で考えなければなりません。

長時間労働を許容することは、労災との関係でもNGです。

改正労基法①(概要)

平成22年4月1日に、労働基準法が改正されました。

今日から、何回かにわたり、改正ポイントについてみていきます。

今日は、最初なので、大きな枠組みからです。

1 改正の趣旨

 今回の労基法改正の趣旨は、「長時間労働を抑制して労働者の健康を確保するとともに、仕事と生活の調和のとれた働き方を実現する」ということです。

一言で言うと、「ワーク・ライフ・バランス」です。

2 最も大きな2つの視点
  
 「ワーク・ライフ・バランス」を実現するために改正した内容を羅列しても、なかなか頭に入りません。
 
 大きな視点から徐々に細かい内容を見ていきます。

 最も大きな視点は2つです。

1 時間外労働の抑制

2 年次有給休暇の取得促進

 この2つについて、今回、改正したわけです。

3 大きな視点2つと1つ

 では、中身に入ります。
 
 「時間外労働の抑制」については、2つの視点で見ていきます。

(1)割増賃金率の引き上げ

(2)特別条項付き協定と時間外労働削減の努力義務

 「年次有給休暇の取得促進」については、1つの視点です。

(1)時間単位年休

4 改正ポイント3・3・1。全部で7つ。

中身に入ります。

1 時間外労働の抑制
(1)割増賃金率の引き上げ(3つ)

ア 月60時間超の時間外割増賃金率の引き上げ

イ 代替休暇の付与

ウ 中小事業主に対する猶予措置

(2)特別条項付き協定と時間外労働削減の努力義務(3つ)

ア 25%超の協定割増賃金率

イ 特別条項付き協定事項の追加

ウ 時間外労働削減の努力義務

2 年次有給休暇の取得促進
(1)時間単位年休

ア 時間単位での年次有給休暇の付与

まずは、大きな枠組みだけ理解しましょう

次回から、1つ1つ見ていきましょう