Category Archives: 管理監督者

管理監督者44(はなまる事件)

おはようございます。

今日は、割増賃金請求と管理監督者該当性に関する裁判例を見てみましょう。

はなまる事件(大阪地裁令和元年12月20日・労判ジャーナル96号64頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員XがY社に対し、雇用契約に基づき、未払時間外割増賃金等の元本約1099万円等の支払とともに、労働基準法114条所定の付加金903万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払時間外割増賃金等請求は一部認容

付加金等請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件退職届に記載されたいわゆる清算条項は、実質的に本訴請求に係る時間外割増賃金等を放棄する趣旨を含むものであり、このような賃金債権の放棄については、労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときに有効となるところ、医師作成の診断書に記載された診断内容及び無断欠勤を継続していたXの行動状況等に照らせば、Y社が指摘するごとく、Y社から書面の送付を受けた後に数日程度の時間経過があったとしても、十分な判断能力を備えた状態において検討がされたものではない可能性があり、さらには、このような賃金債権を放棄することによってXが得られるそれに見合った利益の存在等を認めることはできないのであって、上記にいう合理的な理由が客観的に存在しているとは評価し得ないから、本件退職届の記載によってXが本訴請求に係る賃金債権を放棄したとは認定できない。

2 Xが管理監督者に該当するか否かについて、Xが担当していた主な業務内容は、コンピュータシステムに関しての問合せへの対応業務、コンピュータの基幹システムの保守管理等といったもので、これらについてY社における経営上の決定に参画するような性質があるとは認められず、部下職員の候補者の採用面接に立ち会うなどしていたことはうかがわれるものの、上位者であるD部長の存在、その他課長という役職から想定される地位等に照らせば、Xは現場担当者として意見を述べる立場にはあったものの、人事上の採用権限を有していたとは認め難く、また、Y社が、Xに係る勤怠管理資料を証拠提出していることなどからすれば、Xが労働時間の拘束を受けない立場にあったとは認められず、たとえXにおいて遅刻や早退に関する所定の手続を怠ったことがあったとしても、それは、Y社が厳密に制度運用していなかったにすぎないとみる余地があるから、Xに支給された賃金額等の待遇面をはじめ、本件に現れたその他一切の事情を考慮しても、Xが管理監督者に該当するとは認められない

本件に限らず、上記判例のポイント1のような認定は十分ありえますので、退職合意書に清算条項が入っていたとしても、それだけで本件同様の紛争を回避できるとは思わないほうがいいです。

管理監督者該当性については、言うまでもなくこのレベルでは絶対に認められません。

管理監督者43(エルピオ事件)

おはようございます。

今日は、総務人事課長の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エルピオ事件(東京地裁令和元年9月27日・労判ジャーナル95号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、所定労働時間を超える残業を行ったとして、労働契約に基づく割増賃金請求権に基づき、平成26年10月分から平成28年6月分までの間の割増賃金合計約375万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金請求として約367万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払時間外割増賃金請求は一部認容

付加金等請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xが実質的な決定権限を有していたのは、人事関係業務の一つである採用面接のうち一次面接までで採否を決することができる応募者に関する採否権限という使用者が有する人事権の一部にすぎず、その業務内容に照らしても、労働時間規制の枠を超えた活動を要請されざるを得ない重要な職務や権限を有していたとか、その責任を負っていたとまでは評価できず、また、Xがこのような実質的な決定権限を行使するにあたって労働時間に関する裁量を有していたことを認めるに足りる適切な証拠もないから、Y社におけるXの処遇が高水準であると評価できる点を最大限斟酌するとしても、Xが労基法41条2号の管理監督者であったと認めることはできない

2 Y社が割増賃金を支払わなかったのは、Xを管理監督者と認識していたためであるところ、結果としては管理監督者とは認められないものの、Xの会社内における肩書や処遇に照らすと、Y社がXを管理監督者に該当すると認識したことには一応の理由があると解され、Y社がXに割増賃金を支払わなかったことが悪質であるとは評価できないから、本件において、Y社に付加金の支払を命ずるのは相当でない。

管理監督者に関する主張を会社側で主張するメリットとすれば、付加金の支払を免除してもらえる可能性があることくらいでしょうか。

ほぼ管理監督者性は否定されますので、賃金に関する消滅時効が2年から3年、5年と延長されることを考えれば、すべての管理職の管理監督者扱いにメスを入れることを強くお勧めします。

管理監督者42(日産自動車事件)

おはようございます。

今日は、労働時間の裁量と管理監督者該当性に関する裁判例を見てみましょう。

日産自動車事件(横浜地裁平成31年3月26日・労判ジャーナル88号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の課長職を務めていた亡Xの妻が、Xの死亡によりその賃金請求権の3分の2を相続したとして、Y社に対し、雇用契約による賃金請求権に基づき、平成26年9月から平成28年3月までの時間外労働分につき、労働基準法上の割増率による割増賃金約525万円等並びに労働基準法114条の付加金支払請求権に基づき、未払時間外割増賃金と同額の付加金等の支払を求めた事例である。

【裁判所の判断】

管理監督者に該当しない
→請求の一部認容

付加金等支払請求は棄却

【判例のポイント】

1 D部に配属されていた当時のXのその他の職責及び権限を考慮しても、その当時のXが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責及び権限を付与されていたとは認められず、また、N部に配属されていた当時のXのその他の職責及び権限を考慮しても、その当時のXが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責及び権限を付与されていたとは認められず、Xは、自己の労働時間について裁量があり、管理監督者にふさわしい待遇がなされているものの、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責と責任、権限を付与されているとは認められないから、Xが、管理監督者に該当するとは認められない。

2 Y社が、割増賃金を支払わなかったのは、Xを管理監督者と認識していたためであるところ、Xは、結果として管理監督者とは認められないものの、間接的とはいえ経営意思の形成に影響する職責及び権限を有し、自己の労働時間について裁量も有しており、管理監督者にふさわしい待遇を受けていたことからすれば、Y社がXを管理監督者に該当すると認識したことに、相応の理由があるというべきであり、Y社がX及びXの妻に割増賃金を支払わなかったことについて、その態様が悪質であるということはできないから、本件において、Y社に付加金の支払を命じるのは相当でない

管理監督者の制度運用はもうあきらめたほうがいいかもしれませんね。

要件が厳しすぎてほとんど認められる余地がありません。

管理監督者41(日比谷Bar事件)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、バーの店長の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

日比谷Bar事件(東京地裁平成30年9月28日・労判ジャーナル84号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、時間外労働に従事していたと主張して、雇用契約に基づく賃金支払請求として約437万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金請求として約421万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xは管理監督者に該当しない

【判例のポイント】

1 Xには本件店舗の従業員のシフト作成、アルバイトの本件店舗への配属にかかる面接、本件店舗の予算案の作成、PLの作成といった本件店舗の労務管理に直接ないし間接に関わる職責を果たしている点があるものの、アルバイトの採否自体の判断はXが基本的に関与することはなくY社において行われているなど、アルバイト等の採用、解雇等に関する実質的な権限がXに存するとまでは評価できず、また、本件店舗におけるXの具体的な労務内容が必ずしも明らかではなく、他の従業員とは異なりもっぱら労務管理に関する業務に従事していたとは認められず、さらに、Xの賃金が他の従業員と比較して管理監督者としての職責に見合う程度有意に高額であったことを認めるに足りる証拠もなく、かえって、店長を含めた出勤表が存在することからすれば、店長も他の従業員と同様の業務に従事していたことが推認される上、Xの賃金額は基本給が21万円、店舗管理給等の諸手当を含めても24万5000円ないし25万円とさほど高額であるとは認められず、以上の点を総合考慮すると、Xが労働基準法41条2号の管理監督者に該当するものとは評価できない。

従業員の採用、解雇等に関する実質的な権限の有無が重要な考慮要素となると、世の中の多くの管理職は管理監督者ではないことになります。

だからこそ、多くの裁判で管理監督者性は否定されているわけです。

管理監督者40(コナミスポーツクラブ事件)

おはようございます。

今日は、スポーツクラブ支店長の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

コナミスポーツクラブ事件(東京高裁平成30年11月22日・労判ジャーナル84号24頁)

【事案の概要】

本件は、会員制のスポーツクラブを運営するY社の元従業員X(支店長職又はマネージャー職)が、Y社に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金(割増手当)合計約317万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条所定の付加金として割増賃金と同額の支払を求めたのに対し、Y社が、Xは労働基準法41条2号に定める管理監督者に該当し、時間外労働及び休日労働に対する割増賃金請求権は発生しないなどと主張して争った事案である。

原判決は、Xは、管理監督者に該当しないとして、Xの請求を、割増賃金につき約312万円等の支払、付加金につき90万円等の支払を求める限度で認容した。

Y社が控訴し、Xが付帯控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、XがM2級からM3級に昇格してSM職層になって更に支店長に昇進することで月額9万円の増額となるところ、Xの残業時間が1月当たり約37時間にとどまる限り、支店長昇進前の時間外割増賃金相当分と大差ないことから、管理監督者に相当する処遇を受けていたと評価されるべきであると主張するが、そもそもXが本件請求期間中に支店長であった期間の1か月平均の時間外労働時間数は41時間11分であって、上記の約37時間を超えているのであり、支店長の広範な職責を踏まえると、管理監督者としての地位にふさわしい待遇がされていたと認めることはできないこと等から、Xの職責や権限、勤務態様や待遇等に照らせば、Xが労働基準法41条2号に定める管理監督者の地位にあったと認めることはできない。

2 Xは、Xが労働基準法上の管理監督者に該当しない場合には、労働基準法12条によりY社の給与規程22条及び23条が適用される旨主張するが、労働契約法12条は労働契約が就業規則に違反する場合に無効部分については就業規則によるというものであるが、本件はY社の就業規則が労働基準法に反するものであるから、労働基準法13条により無効部分については労働基準法によることになり、当事者の合理的意思解釈としてもそのように解すべきであることは原判決が説示するところである。

ファストフードの店長やスポーツクラブの支店長ですら管理監督者に該当しないわけですから、一般的な会社の部長クラスを管理監督者と考えることはもはやあきらめたほうがいいでしょう。

管理監督者39(MUKU事件)

おはようございます。

今日は、管理監督者の該当性に関する裁判例を見てみましょう。

MUKU事件(大阪地裁平成30年7月20日・労判ジャーナル81号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、労働基準法37条に基づき、平成27年3月から平成29年2月まで毎月20日を支払期日とする割増賃金合計約398万円等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金として約379万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 アルバイトや正社員の採否や昇給等の最終的な決定は、全てY社代表者が行っていたというのであるから、Xが行った募集媒体の提案等は、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの職務及び権限とは認められず、また、Xは、自らを含む本件店舗の従業員のシフト表を作成し、自らもこのシフト表のとおりに勤務していたことが認められるが、Xによるシフト表の作成方法は、Xが本件店舗の店長に就任した平成28年2月以降も、Xの拘束時間が相当長時間に及んでいることに照らせば、Xが自分の都合に合わせてシフト表を作成することができる状況にあったとは認められないから、Xは、本件店舗の店長に就任後、自己の労働時間についての裁量を有していたとは認められず、そして、店長就任後のXの給与の額が、管理監督者の地位にふさわしいものであると評価することはできないこと等から、本件店舗の店長に就任した後のXが、実質的に経営者と一体的な立場にあるとはいえず、労働基準法41条2号所定の管理監督者に当たるということはできない

今は昔の論点です。

本件でも管理監督者性は否定されています。

管理監督者38(エルライン事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、経営に関する権限を相当程度有した労働者の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エルライン事件(大阪地裁平成30年2月2日・労判ジャーナル74号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、Y社に対し、平成25年12月16日から平成28年6月15日までの時間外労働、法定休日労働及び深夜労働に係る割増賃金合計951万1420円等の支払並びに労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

管理監督者には当たらない。

【判例のポイント】

1 Xについては、担当するグループの経営に関する権限を相当程度有し、それなりに高額な賃金を支給されるなど、管理監督者性を肯定する要素も認められるものの、その権限には一定の制約があった上、業務命令により容易に覆されるものであったことも踏まえると、Xが実質的に経営者と一体的な立場にあったとまでいうことはできず、出退勤の自由や待遇の点からみても、労基法上の労働時間等に関する規制による保護が不要であるということはできないから、Xが管理監督者に該当すると認めることはできない。

2 Y社は、Xが管理監督者であると認識して時間外手当等の支給対象外としていたものと認められるところ、Y社の法令解釈は結論として誤っていたといわざるを得ないが、Xの管理監督者性を肯定する要素も一定程度認められ、また、仮にXが管理監督者に該当するとしても、Y社は深夜労働に対する割増賃金の支払義務は免れないところ、本件においては、Xに対し、深夜労働に対する割増賃金の額を超える月額3万円の固定残業手当が支給されていることから、Y社が、Xは管理監督者に該当すると認識し、Xに対する割増賃金を支払わなかったことにも相当の理由があったと認められ、Y社による不払の対応が悪質であったということはできないから、本件において、Y社に対し付加金の支払を命ずるのは相当でない

なかなか管理監督者性のハードルは高いのです。

また、上記判例のポイント2に書かれているように、管理監督者に該当する場合でも、深夜労働に対する割増賃金は支払う必要がありますのでご注意ください。

管理監督者37(プレナス(ほっともっと元店長B)事件

おはようございます。

今日は、弁当チェーン店元店長の管理監督者性と割増賃金等請求に関する事案を見てみましょう。

プレナス(ほっともっと元店長B)事件(大分地裁平成29年3月30日・労判1158号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員であり、平成26年8月5日にY社を退職したXが、Y社に対し、時間外労働の賃金及び寮費相当額として控除されてきた賃金部分+遅延損害金、付加金+遅延損害金、慰謝料50万円+遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、1011万4971円+内953万3480円に対する遅延損害金(6%)を支払え

その余の請求はいずれも棄却

【判例のポイント】

1 Xは、その職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇などの実態からすれば、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有するとも、現実の勤務態度が労働時間等の規制になじまないような立場にあるともいえないから、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者、すなわち管理監督者に該当するとは認められない。 

2 本件では、Xの時間外労働の割増賃金支払義務の前提問題として、Xの管理監督者該当性が主要な争点として争われているところ、この点に関する当事者双方の主張内容や事実関係のほか、栃木労基署はY社に対し是正勧告を行ったものの、Y社から管理監督者に該当する旨の報告書が提出されて以降特段の手続が取られていないことなどに照らせば、Y社がXの割増賃金の支払義務を争うことには合理的な理由がないとはいえないというべきである。
したがって、未払賃金に対する遅延損害金については、商事法定利率によるべきである。

3 Y社は、Xに対し、労基法37条の定める時間外割増賃金及び休日割増賃金の支払義務を怠っているものといえるが、当事者双方の主張内容や事実関係、その後の訴訟経過に照らせば、Y社に対し、付加金という制裁を課すことが相当とはいえない

管理監督者性に関しては、上記判例のポイント1のとおり、箸にも棒にもかからない感じですが、この争点の裏の意味としては、上記判例のポイント3のとおり、付加金を抑えるということが挙げられます。

うまくいくときといかないときがありますが。

あと、上記判例のポイント2についても、14.6%になっていない点で参考になります。

管理監督者36(穂波事件)

おはようございます。

今日は、飲食店店長の監理監督者性と固定残業代に関する裁判例を見てみましょう。

穂波事件(岐阜地裁平成27年10月22日・労判1127号29頁)

【事案の概要】

本件は、平成20年7月からY社に勤務しているXが、Y社に対し、平成23年9月分ないし平成25年9月分の未払の時間外・休日・深夜割増賃金282万1547円があると主張して、同金員及びこれに対する遅延損害金を請求するとともに、労基法114条に基づいて、同額の付加金及び遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し282万1547円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し227万8089円の付加金+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の「店長」として勤務しており、担当店舗に勤務するパート等従業員の採用、給料、昇給等について一定の権限を有しており、毎月のシフト割などを決めるほか、担当店舗の金銭の管理、食材の発注量の決定、店舗の什器備品の購入について一定の範囲の権限があったことが認められる。
しかしながら、他方で、当該店舗の営業時間を変更することはできず、パート等従業員の給料や、昇給等についても一定の枠の範囲内での権限であった上、Xに与えられていた権限は、担当店舗に関する事項に限られていて、Y社の経営全体について、Xが、決定に関与することがなされていたとは認められないのであって、企業経営上の必要から経営者との一体的な立場において、労基法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないといえるような重要な職務と権限を付与されていたということは困難である

2 また、その勤務態様についても、タイムカードを打刻することが求められ、出退勤について監理されていた上、店長が担当店舗の営業日や営業時間を自ら決定する権限はなく、休むためにはアシスト等代行者を確保する必要があったというのであるから、Xは、実質的には、自らの労働時間を自由に決定することはできないものであった。
さらに、Xの収入が、賃金センサスによる平均賃金を上回っていたとしても、Y社において、店長が賃金面で、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られていたとは認められない
以上を総合すると、Xが労基法の41条2号の監理監督者に該当すると認めることはできないというべきである。

3 Xは、少なくとも、平成25年1月7日以降は、管理職手当(管理固定残業)として毎月10万円支給されているものが、みなし残業手当83時間相当として支給されていることを認識していたと認められる。
しかしながら、上記の83時間の残業は、36協定で定めることのできる労働時間の上限の月45時間の2倍に近い長時間であり、しかも、「朝9時半以前及び、各店舗の閉店時刻以後に発生するかもしれない時間外労働に対しての残業手当」とされていることを勘案すると、相当な長時間労働を強いる根拠となるものであって、公序良俗に違反するといわざるを得ず、これがXとY社との間で合意されたということはできない
また、他方、Y社が本件において、店舗開店前や、閉店時刻以後の残業はあまり考えられないと主張していることなどに照らすと、「朝9時半以前及び、各店舗の閉店時刻以後に発生するかもしれない時間外労働」が、月83時間も発生することはそもそも想定しがたいものであったと言わざるを得ず、その意味でも、これをXとY社との間の労働契約において合意がなされたということはできない。
よって、管理者手当(管理固定残業)は時間外労働に対する手当として扱うべきではなく、月によって定められた賃金として、時間外労働等の割増賃金の基礎とすべきである。

管理監督者性と固定残業代が争点となっています。

いずれももはや昔の論点といえます。

近くに「社長、これだと裁判、100%負けますよ・・・」とアドバイスしてあげる弁護士や社労士がいたらよかったのに・・・と思ってしまいます(実際にはアドバイスをしても聞く耳を持たない経営者もおりますが)。

固定残業制度を導入する場合には、ちゃんとやらないと、基礎賃金が増えてしまうので、余計に多くの残業代を支払うことになってしまうことをまずは理解すべきです。

管理監督者35(新富士商事事件)

おはようございます。

今日は、退職した元営業所長の管理監督者性と割増賃金等請求についての裁判例を見てみましょう。

新富士商事事件(大阪地裁平成25年12月20日・労判1094号77頁)

【事案の概要】

本件は、自動車オークション会場における車両の移動等の業務を請け負っている株式会社であるY社との間で労働契約を締結し、営業所長として勤務していたXが、時間外および深夜割増賃金の支払いを受けていないとともに、一方的に賃金を減額して支給されたと主張して、Y社に対し、上記労働契約に基づき、時間外および深夜割増賃金ならびに遅延損害金の支払いを求めるとともに、不当利得に基づき、減額された賃金相当額の不当利得金及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

Y社は、Xが管理監督者に該当すると主張して、時間外割増賃金の支払義務を争っている。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定
→433万8618円の支払いを命じた

賃金減額分の13万4000円の支払いも命じた

【判例のポイント】

1 Xの職務内容及び権限についてみるに、Y社が行っている事業としては本件業務しか存在せず、本件業務の遂行に当たり、アルバイト従業員に対する業務の割当て、業務内容の指示及び出退勤時間の指定等に加え、A社との間の業務遂行上の調整等も、専らXの権限とされていたことが認められるから、Xは、本件業務の現場における責任者の地位にあり、アルバイト従業員の労務管理上の決定等についても一定程度の権限を有していたものと認められる。

2 しかしながら、Xの業務内容自体は、アルバイト従業員又は役職のない正社員であったときとほぼ変わりがなかったものであるだけでなく、Xは、正社員のみならず、アルバイト従業員についても、採用や賃金等の決定をする権限はないなど、本件業務に伴う経理や人事に関する権限を一切有しておらず、Y社及び関連会社の責任者が集まる幹部会議にも出席することはなかったものであるから、Xが有していた権限の範囲は、現場責任者としての限定的なものにとどまっていたものというべきである。
また、Xの労働時間に関する裁量権の有無についてみるに、Xは、タイムカードにより労働時間が管理されており、出退勤の自由に関する裁量権も有していなかったものといえる。
さらに、Xは、Y社のB営業所長として3万円の役付手当を支給されており、毎月の支給額は上司であるC部長と比較して、約3万5000円しか変わらないこと、年収は合計510万円程度にすぎないし、Xが毎月約30時間から時には100時間以上もの時間外及び深夜労働を行っていたことを考慮すると、その地位と権限にふさわしい処遇がされていたともいい難い

3 以上によれば、Xは、管理監督者にふさわしい職務内容及び権限を有していたとは直ちにいえないだけでなく、労働時間に関する裁量権も有しておらず、賃金上も管理監督者にふさわしい処遇がされていたとはいえないから、Xが管理監督者に該当するということはできない。

久しぶりに管理監督者性が問題となった裁判例を取り上げます。

結果は、やはり認められませんでした。

結果、会社は高額な支払いを命じられています。

裁判所が管理監督者性を認めてくれるのは、本当にごくわずかです。 そのあたりを踏まえた労務管理をする必要があります。