1 「面会交流を命じる審判に基づき監護親に間接強制決定をすることができるためには,審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付が特定されている必要があるが(最高裁判所平成25年3月28日決定参照),抗告審決定2により変更された抗告審決定1に定められた相手方を未成年者と面会交流させる抗告人らの義務(以下「本件債務」という。)については,抗告人らが履行すべき給付の特定に欠けるところはない。
しかるに,抗告人らは,未成年者が相手方との面会交流を拒否していることから,本件債務については履行不能の状態にあり,間接強制をすることは許されない旨主張する。
上記決定の事案においては,離婚した夫婦間で月1回の子との面会交流を認めた審判に基づく間接強制について,義務者である母親において,子が面会交流を拒絶する意思を示しているとして間接強制決定が許されないと主張したのに対し,上記決定は,「子の面会交流に関する審判は,子の心情等を踏まえた上でされているといえる。
したがって,監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判がされた場合,子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは,これをもって,上記審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し,又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別,上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。」と説示した。」
2 「しかし,上記事案における子は平成18年●●●月生まれであり,上記決定当時は満7歳に達していないのに対し,本件の未成年者は平成13年●●●月●●●日生まれであり,平成29年●●●月●●●日(当時満15歳3か月)に行われた前記家庭裁判所調査官による意向調査において,相手方との面会交流を拒否する意思を明確に表明し,その拒否の程度も強固である。
そして,そのような意思は未成年者自身の体験に基づいて形成されたもので,素直な心情の吐露と認められるから,その意思は尊重すべきである(なお,相手方は,未成年者の意思は,頑なに面会交流を拒否する抗告人らの影響を受けており,本心とは評価できないと主張する。
しかし,仮に未成年者が面会交流に消極的な抗告人らの意向を聞いているとしても,上記意向調査の結果によれば,未成年者はそれも踏まえて自らの意思で面会交流を拒否していると認められるから,未成年者の意思を本心でないとか,抗告人らの影響を受けたものとしてこれを軽視することは相当でない。)。
また,間接強制をするためには,債務者の意思のみによって債務を履行することができる場合であることが必要であるが,幼児のような場合であれば,子を面会交流場所に連れて行き非監護親に引き渡すことは監護親の意思のみでできるが,未成年者のような年齢の場合は子の協力が不可欠である上,未成年者は相手方との面会交流を拒否する意思を強固に形成しているところ,未成年者は平成29年●●●月より高等学校に進学しており,その精神的成熟度を考慮すれば,抗告人らにおいて未成年者に相手方との面会交流を強いることは未成年者の判断能力ひいてはその人格を否定することになり,却って未成年者の福祉に反するということができる。
したがって,本件債務は債務者らの意思のみによって履行することはできず履行不能というべきである。
加えて,前記認定のとおり,抗告人らは相手方と未成年者の面会交流の拒否を求めて調停申立てをしているところ,その帰趨を待つ余裕がないほど喫緊に面会交流を実施しなければ未成年者の福祉に反するような事情があるとも認められない。
以上によれば,抗告人らの本件債務の不履行に対して間接強制決定をするのは相当でない。」