1 「前件調停以後、当事者双方の収入に顕著な変動があり、養育費の額を変更するのを相当とする事情の変更があったものと認められる。
算定表に当事者双方の直近の収入を当てはめれば、申立人の支払うべき養育費は、月額9万円と算定される。
なお、申立人が復職できない場合という将来の不確実な事情を前提とした判断をすることはできない。」
2 本件事例では、義務者がガンの診断を受けて減収したことは、合意当時に予測し得なかった重大な事情変更であるといえたから、減額が認められた。
一方、更に減収する可能性に基づき将来の減額まで認めることはしなかった。
3 参考事例
①義務者が調停成立後に宅地を購入して自宅を新築するため借金をした事実は、調停成立時に予見し得なかった事情変更とはいえるが、自宅を新築すべき切迫した事情があったわけではなく、現在の状況は義務者が無謀な宅地購入・自宅新築により自ら招いたものである上、養育費が義務者の収入を前提として不当に重い負担とはいえない等として、養育費の減額請求を認めなかった例(福岡高宮崎支決昭和56年3月10日)
②義務者の勤務先が業績不振となり、収入が大幅に減少したことに加え、再婚・再婚子の誕生により扶養家族が増えたことに基づき、養育費の減額請求を認めた例(山口家審平成4年12月16日)
③義務者が調停成立時に、収入の減少について具体的に認識していたか、少なくとも十分予測可能であったことを理由に、収入の減少は養育費を減額すべき事情の変更ということはできないとした例(東京高決平成19年11月9日)。