「被上告人(妻)は、上告人(夫)と婚姻関係にあったにもかかわらず、上告人以外の男性と性的関係を持ち、その結果、二男を出産したというのである。
しかも、被上告人は、それから約2か月以内に二男と上告人との間に自然的血縁関係がないことを知ったにもかかわらず、そのことを上告人に告げず、上告人がこれを知ったのは二男の出産から約7年後のことであった。
そのため、上告人は、二男につき、民法777条所定の出訴期間内に嫡出否認の訴えを提起することができず、そのことを知った後に提起した親子関係不存在確認の訴えは却下され、もはや上告人が二男との親子関係を否定する法的手段は残されていない。
他方、上告人は、被上告人に通帳等を預けてその口座から生活費を支出することを許容し、その後も、婚姻関係が破綻する前の約4年間、被上告人に対し月額150万円程度の相当に高額な生活費を交付することにより、二男を含む家族の生活費を負担しており、婚姻関係破綻後においても、上告人に対して、月額55万円を被上告人に支払うよう命ずる審判が確定している。
このように、上告人はこれまでに二男の養育・監護のための費用を十分に分担してきており、上告人が二男との親子関係を否定することができなくなった上記の経緯に照らせば、上告人に離婚後も二男の監護費用を分担させることは、過大な負担を課するものというべきである。
さらに、被上告人は上告人との離婚に伴い、相当多額の財産分与を受けることになるのであって、離婚後の二男の監護費用を専ら被上告人において分担することができないような事情はうかがわれない。
そうすると、上記の監護費用を専ら被上告人に分担させたとしても、子の福祉に反するとはいえない。
以上の事情を総合考慮すると、被上告人が上告人に対し離婚後の二男の監護費用の分担を求めることは、監護費用の分担につき判断するに当たっては子の福祉に十分配慮すべきであることを考慮してもなお、権利の濫用に当たるというべきである。」