弁護士法人栗田勇法律事務所 > 離婚問題重要判例紹介 > 【最判平成29年1月31日・養育費】強制執行認諾文言のある公正証書で養育費の支払が定められたが、その支払期限が到来しているものについて未履行分がある場合において、その支払期限が到来していない養育料債権を被保全債権として債務者所有の不動産に対してされた仮差押命令の申立てについて、民事保全制度を利用する必要性を欠くとの理由でこれを却下すべきものとして原審の判断が是認された事例

【最判平成29年1月31日・養育費】強制執行認諾文言のある公正証書で養育費の支払が定められたが、その支払期限が到来しているものについて未履行分がある場合において、その支払期限が到来していない養育料債権を被保全債権として債務者所有の不動産に対してされた仮差押命令の申立てについて、民事保全制度を利用する必要性を欠くとの理由でこれを却下すべきものとして原審の判断が是認された事例

以下、東京高決平成28年5月12日。

1 「仮差押命令は,民事訴訟の本案の権利の実現を保全するため(民事保全法1条)の民事保全処分の一つであって,金銭の支払を目的とする債権(以下「金銭債権」という。)については,強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができるものとされている(同法20条1項)。

本件における被保全権利は,強制執行認諾文言が付された本件公正証書に記載の養育料債権であるところ,金銭債権について確定判決等の債務名義が存在する場合には,債権者は,特別の事情のない限り,速やかに差押命令の申立て等による強制執行をすることができるから,原則として,民事保全制度を利用する必要性(権利保護の利益)が認められず,仮差押命令を発することはできない

ただし,金銭債権について債務名義が存在していても,執行停止命令が発せられているため,その債務名義に基づく強制執行を開始できないような場合など,債権者が強制執行をすることを望んだとしても速やかにこれをすることができない特別の事情がある場合には,強制執行をすることができなくなるおそれ又は強制執行をすることが著しく困難になるおそれがないとはいえず,民事保全制度を利用して権利保護を図る特別の必要性が認められるとして,例外的に上記債権を被保全権利とする仮差押命令を発する余地がないわけではない。」

2 「そこで,前記(1)の特別の事情の存否について以下検討するに,まず,本件における被保全権利は,毎月末日払いの養育料債権であるところ,毎月当月分についての履行期が到来するものであるし,平成14年6月分から平成28年1月分の養育料もその全額が支払われているわけではなく,現に期限が到来した未払の債権として239万円が存在するから,抗告人は,本件公正証書に基づき,本件において被保全権利となっていない慰謝料等の債権をも含め請求債権として,速やかに本件不動産につき強制競売の申立てをし,手続を開始させることが可能である

この点について,本件不動産には,前記認定事実のとおり,平成22年1月▲日付けで,貸金返還請求権として元金3000万円並びにこれに対する利息及び遅延損害金を被担保債権とする抵当権が付されており,債権者名からみて長期分割払いの住宅ローン債権であると推認される。

そして,固定資産評価額の合計は1011万9413円であることからすると,相手方の貸金返済状況は不明であるものの,抵当権設定時から6年余りしか経過していない現時点においては,貸金残高が本件不動産の評価額を上回っている可能性が高く,仮に本件不動産の強制競売を申し立てたとしても,無剰余を理由として競売手続が取り消される可能性は相当程度認められる

しかしながら,上記取消しの可能性は確実なものとまではいえず,執行停止命令が発せられている事例や,実際に強制競売手続を申し立てたが,無剰余を理由として同手続が取り消されているような事例と同列に論ずることはできない。

確かに,不動産の強制競売を申し立てるには相当の費用を要し(東京地方裁判所の運用では,請求債権額が2000万円以下の場合は60万円の予納金が必要となる。),手続が開始しても無剰余を理由に取り消されれば債権の回収はできないのであるから,抗告人のような養育料の支払を受けられない債権者にとって,無剰余取消しが相当程度見込まれる強制競売を申し立てることが経済的にちゅうちょされることは理解できるが,これをもって,速やかに強制執行をすることができない十分な事情があると認めることは困難であるといわざるを得ない

したがって,本件においては,債務名義が存在する被保全権利につき,なお民事保全制度を利用し権利保護を図る特別の必要性は認められないといわざるを得ない。」


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