弁護士法人栗田勇法律事務所 > 離婚問題重要判例紹介 > 【東京高判平成29年1月26日・親権】母と年間100日面会させるとした父を長女の親権者とした一審判決を変更して、主たる監護者である母をその親権者に指定した事例

【東京高判平成29年1月26日・親権】母と年間100日面会させるとした父を長女の親権者とした一審判決を変更して、主たる監護者である母をその親権者に指定した事例

1 「父母が裁判上の離婚をするときは,裁判所は,父母の一方を親権者と定めることとされている(民法819条2項)。

この場合には,未成年者の親権者を定めるという事柄の性質と民法766条1項,771条及び819条6項の趣旨に鑑み,当該事案の具体的な事実関係に即して,これまでの子の監護養育状況,子の現状や父母との関係,父母それぞれの監護能力や監護環境,監護に対する意欲,子の意思(家事事件手続法65条,人事訴訟法32条4項参照)その他の子の健全な成育に関する事情を総合的に考慮して,子の利益の観点から父母の一方を親権者に定めるべきものであると解するのが相当である。

父母それぞれにつき,離婚後親権者となった場合に,どの程度の頻度でどのような態様により相手方に子との面会交流を認める意向を有しているかは,親権者を定めるに当たり総合的に考慮すべき事情の一つであるが,父母の離婚後の非監護親との面会交流だけで子の健全な成育や子の利益が確保されるわけではないから,父母の面会交流についての意向だけで親権者を定めることは相当でなく,また,父母の面会交流についての意向が他の諸事情より重要性が高いともいえない。」

2 「被控訴人は,自分が親権者に定められた場合には,控訴人と長女との面会交流を年間100日程度認める用意があるから,被控訴人を親権者に定めるべきであると主張する。

一般に,父母の離婚後も非監護親と子との間に円満な親子関係を形成・維持することは子の利益に合致することであり,面会交流はその有力な手段である。

しかし,親権者を定めるに当たり,非監護親との面会交流に関する事情は,唯一の判断基準ではなく,他の諸事情よりも重要性が高い事情でもないことは,上記説示のとおりである。

そして,控訴人宅と被控訴人宅とは片道2時間半程度離れた距離関係にあり,現在小学校3年生の長女が年間100日の面会交流のたびに被控訴人宅と控訴人宅とを往復するとすれば,身体への負担のほか,学校行事への参加,学校や近所の友達との交流等にも支障が生ずるおそれがあり,必ずしも長女の健全な成育にとって利益になるとは限らない。

他方,控訴人は,自分が親権者に定められた場合にも,被控訴人と長女との面会交流自体は否定していないが,その回数は当面月1回程度を想定している。

しかし,当初はこの程度の頻度で面会交流を再開することが長女の健全な成育にとって不十分であり長女の利益を害すると認めるに足りる証拠はない。

なお,控訴人と被控訴人とが平成22年5月1日に激しいけんかをした際,その様子を見ていた長女は「おしまい」「おしまい」と何度も言っていたことからみて,長女にとっては,非監護親との面会交流だけではなく,離婚後の父母(控訴人と被控訴人)が少しでも関係を改善し仲が悪くなくなることも,その心の安定や健全な成育のために重要なことであると推認されるところである。

以上の諸事情のほか,長女の現在の監護養育状況にその健全な成育上大きな問題はなく,長女の利益の観点からみて長女に転居及び転校をさせて現在の監護養育環境を変更しなければならないような必要性があるとの事情は見当たらないことも総合的に勘案し,長女の利益を最も優先して考慮すれば,長女の親権者は控訴人と定めるのが相当である。」

3 「なお,控訴人は,被控訴人との別居に際し長女を連れて行ったところ,このことが被控訴人の意に反するものであったことは明らかである。

しかしながら,控訴人が長女を連れて被控訴人と別居した平成22年5月6日当時,長女は満2歳4か月であり,業務で多忙な被控訴人に長女の監護を委ねることは困難であったと認められるし,その前の時期,控訴人と被控訴人の婚姻関係も険悪で破綻に瀕していたものであるから,長女の今後の監護についてあらかじめ協議することも困難であったと認められる

そして,控訴人は,同月15日から同年9月26日までの間,8回にわたり被控訴人と長女との面会交流の場を設け,その後,平成23年3月21日までの間,被控訴人と長女との電話による交流もさせてきた。

控訴人は,平成22年9月26日の後は,被控訴人に長女との面会交流をさせなかったが,これは,同月8日,被控訴人が,控訴人に対し,長女と被控訴人がテレビ番組「●●●」で放映される旨,他のマスメディア関係者もこの問題を取り上げる旨等を記載したメールを送り,実際に同日,被控訴人がマスメディアに提供した面会交流時の長女の映像が,目の部分にぼかしが入れられていたものの,放映され,控訴人がこれに衝撃を受けたことによるものである(なお,控訴人は,マスメディアの取材や被控訴人による長女の撮影がないことを条件として,同月26日の面会交流に応じたものである。)。

したがって,控訴人が別居に当たり幼い長女を放置せずに連れて行ったことやその後の面会交流についての控訴人の対応をもって,長女の利益の観点からみて,控訴人が親権者にふさわしくないとは認め難い

また,被控訴人は,控訴人が親権者に定められたら長女を外国に連れて行くと主張するが,控訴人が再度●●●で国際協力や開発途上国関連の仕事に就くとの蓋然性が高いとの証拠はない。

また,控訴人と被控訴人とは面会交流の在り方について考え方を大きく異にしているが,今後の被控訴人と長女との面会交流の具体的な内容については,控訴人と被控訴人との協議が整わないときは,家庭裁判所で定められるべきものであることはいうまでもない。」


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