1 「抗告人は、減価償却費を相手方の所得金額に加算すべきと主張するが、抗告人は、本件マンションに無償で居住していることにより、減価償却費を計上することによるキャッシュフロー上の利益について実質的な分配を受けている上、相手方が本件マンションに係る固定資産税・都市計画税、借入金を支払っていることによる利益も享受しているといえることに照らし、原審判が、減価償却費を所得金額から控除することは相当といえないものの婚姻費用の算定において考慮するものとして(なお、借入金元本部分の返済は、税法上、不動産所得の必要経費に含まれないが、原審判はこれを特別経費として控除することはしていない。)、婚姻費用月額を40万円と定めたことは相当である。」
2 減価償却費の額が適正であれば、これを加算せず、額が不相当であれば、これを加算した上で、現実の借入金元本返済分の全部又は一部を特別経費として認めるという処理が妥当であると考えられる。
3 参考判例
①減価償却費は現実に支出を要するものではないから、所得金額に加算するのが相当であるとした例(大阪高決平成18年6月23日)
②減価償却費は、現実に事業用資産の取得に要した負債の弁済などをしている場合には、婚姻費用算定上必要経費として認めることに相当性があるとした上で、当該事案においてはそのような事情が窺えないとして減価償却費を課税される所得金額に加算した例(大阪高決平成18年10月13日)
③減価償却費は、現実の支出を伴うものではないから、収入から控除するのは相当でないとする一方、税務上必要経費とされていない不動産取得のための借入金の元本分の返済については、現実に支出されていることから、これを不動産収入から控除する必要があるとした例(大阪高決平成20年5月1日)