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【東京高決平成28年1月19日・養育費/婚姻費用】養育費の算定に当たり、失職した義務者の収入について、潜在的稼働能力に基づき認定することが許される場合

1 「養育費は,当事者が現に得ている実収入に基づき算定するのが原則であり,義務者が無職であったり,低額の収入しか得ていないときは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合に初めて,義務者が本来の稼働能力(潜在的稼働能力)を発揮したとしたら得られるであろう収入を諸般の事情から推認し,これを養育費算定の基礎とすることが許されるというべきである
 
原審は,前記判断において,賃金センサスを参考として抗告人が失職した平成27年×月以降も従前の収入(ただし,平成25年の収入であって,失職直前の年収が同程度であるかは不明)と同程度の収入を得られたはずであると認定判断している。

しかしながら,一件記録によれば,抗告人は,失職後,就職活動をして雇用保険を受給しているが,原審判がされた平成27年×月×日の時点では未だ就職できていなかったことが認められるところ,その状態が,抗告人の主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮していないものであり,相手方との養育費分担との関係で公平に反すると評価されるものかどうか,また,仮にそのように評価されるものである場合において,抗告人の潜在的稼働能力に基づく収入はいつから,いくらと推認するのが相当であるかは,抗告人の退職理由,退職直前の収入,就職活動の具体的内容とその結果,求人状況,抗告人の職歴等の諸事情を審理した上でなければ判断できないというべきであるが,原審は,こうした点について十分に審理しているとはいえない。

なお,少なくとも,抗告人が平成27年×月に失職した直後から従前の収入と同程度の収入が得られたはずであるとの原審の認定判断は,抗告人が退職する必要もないのに辞職したというような例外的な事情がある場合でない限り,是認できないものである。

また,仮に抗告人が失職した直後から直ちに潜在的稼働能力に基づく収入を算定することが相当でないのであれば,それが相当でない期間は,雇用保険による実収入について審理し,これを養育費算定の基礎とする必要がある

さらに,原審の認定判断を前提としても,原審が平成26年×月から平成27年×月までの間につき,抗告人が相手方に支払うべき未成年者らの養育費の減額を認めず,同年×月以降のそれについてのみ減額を認めた根拠も不明である。

以上に加えて,抗告人が当審において提出した甲1号証によれば,抗告人は,原審判後の平成27年×月×日にEと労働契約を締結し,平成28年×月×日から就業を開始することになり,その収入は業務の成果によって変動する約定となっていることが認められ,この事実も本件申立ての当否に影響する事情となり得る。」


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