弁護士法人栗田勇法律事務所 > 離婚問題重要判例紹介 > 【東京高決平成28年9月14日・婚姻費用】別居中の夫婦間において、妻である相手方が、夫である抗告人に対し、毎月相当額の婚姻費用の支払を求める事案について、いわゆる標準算定方式を前提としつつ、義務者の年収がいわゆる算定表の上限額である2000万円を相当程度超えている場合において、基礎収入を算定するに当たっては、税金及び社会保険料の各実額、職業費並びに特別経費に加え、貯蓄分を控除すべきであるとした事例

【東京高決平成28年9月14日・婚姻費用】別居中の夫婦間において、妻である相手方が、夫である抗告人に対し、毎月相当額の婚姻費用の支払を求める事案について、いわゆる標準算定方式を前提としつつ、義務者の年収がいわゆる算定表の上限額である2000万円を相当程度超えている場合において、基礎収入を算定するに当たっては、税金及び社会保険料の各実額、職業費並びに特別経費に加え、貯蓄分を控除すべきであるとした事例

1 「この額は、いわゆる標準算定表(判例タイムズ1111号285頁参照)の義務者の年収の上限額2000万円を大幅に超えていることに鑑み、抗告人の基礎収入を算定するに当たっては、税金及び社会保険料の実額(1348万9317円)を控除し、さらに、職業費、特別経費及び貯蓄分を控除すべきである。」

2 「この点、相手方は、収入が増加するほど収入に占める職業費及び特別経費の割合が低下する旨主張する。

また、相手方は、いわゆる標準算定方式は、年収2000万円以下の者でも一定程度の貯蓄をしていることを前提に制度設計されており、抗告人についても標準算定方式を準用して基礎収入を算定すれば足りるのであって、平均貯蓄額のような曖昧な概念を持ち出すべきではないとか、貯蓄率の考慮は必須なものではないとか、仮に年収2000万円程度の者の平均的な貯蓄額と年収3900万円程度の者の平均的な貯蓄額との差額を考慮するのであれば、年収1500万円の者の貯蓄率31.7%とそれ以上の年収の者の貯蓄率31.9%との差額である0.2%にとどめるべきであるとかとも主張する。

他方で、抗告人は、標準算定方式は年収2000万円を基準としてそこまでは貯蓄考慮を一律行わないという政策的な取扱いをしているだけであって、これを超える場合には差額にとどめず純粋に貯蓄率を反映させるべきであり、家計調査年報の、総世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率が、全収入の平均で21.4%であることからこの割合が控除されるべきであるとか、仮に差額のみを考慮するものとしても、家計調査年報の、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率が、年収1500万円以上が31.9%、1500万円未満の各収入の貯蓄率の平均値が16%であることから、その差額の15.9%が控除されるべきであるとかと主張する。

この点、職業費については、抗告人の場合と年収2000万円以下の場合とでその占める割合が大きく変わるとは考えられないから収入比18.92%とすべきである。

他方で、特別経費については、一般に高額所得者の方が収入に占める割合が小さくなり、その分貯蓄や資産形成に回る分が増える傾向にあると考えられる。

そして、年収2000万円以下の者でも相応の貯蓄はしているはずであり、抗告人のこれまでの貯蓄額が判然としない本件事案においては、抗告人についてのみ純粋に平均的な貯蓄額の満額を控除すべきではなく、標準算定表の上限である年収2000万円程度の者の平均的な貯蓄額との差額のみを考慮すべきである(標準算定方式では,特別経費について年収1500万円以上の者について収入比16.40%との前提に立っているが、年収2000万円程度の場合でも同様の収入比に立っており、この中に貯蓄的要素を既に加味しているともいえる。)。

もっとも、本件では、年収2000万円程度の者の貯蓄額と3900万円程度の者の貯蓄額との比較ができる有意な資料がないことから、その差額について推認するほかないところ、抗告人が引用する家計調査年報の、総世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率は、年収1018万円以上が27.3%、全収入の平均が21.4%であること、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の貯蓄率が、年収1500万円以上が31.9%、全収入の平均が19.8%であること、その他本件に現れた一切の事情を考慮して、特別経費については年収1500万円以上の者の収入比とされる16.40%とするとともに、抗告人について、総収入から税金及び社会保険料を控除した可処分所得の7%分を相当な貯蓄分と定めることとする。」


パーマリンク

コメントは停止中です。

弁護士法人栗田勇法律事務所 〒420-0858 静岡県静岡市葵区伝馬町9-10NTビル301 TEL 054-271-2231 アクセスページへ ご相談のお申込に関するQ&A お問い合わせはこちら
営業エリア

静岡市葵区・駿河区・清水区、焼津市、藤枝市、島田市、
吉田町、牧之原市、御前崎市、菊川市、掛川市、袋井市、
磐田市、浜松市中区・東区・西区・南区・北区、湖西市、
富士市、富士宮市、裾野市、沼津市、御殿場市、三島市、
熱海市、伊豆の国市