1 民法819条6項は、「子の利益のため必要があると認めるとき」に親権者の変更を認める旨規定しているから、親権者変更の必要性は、親権者を指定した経緯、その後の事情の変更の有無と共に当事者双方の監護能力、監護の安定性等を具体的に考慮して、最終的には子の利益のための必要性の有無という観点から決せられるべきものである。
そこで検討すると、①未成年者らは平成25年×月以降、親権者である相手方ではなく抗告人及びその両親に監護養育され、安定した生活を送っており、このような監護の実態と親権の所在を一致させる必要があること、②婚姻生活中において、相手方は、未成年者らに対して食事の世話等はしているものの、夜間のアルバイトをしていたこともあって、未成年者らの入浴や就寝は抗告人が行っており、またその間の未成年者Cの幼稚園の欠席日数も少なくないこと、③相手方は、未成年者らの通園する幼稚園の行事への参加に消極的であること、また、親権者であるにもかかわらず保育料の支払いも行っていないこと、④相手方に監護補助者が存在せず、抗告人と対比して未成年者らの監護養育に不安がある(両親を含めた抗告人と相手方との話し合いにおいて、相手方以外が相手方が未成年者らの親権者となることに反対したことからも、その監護能力に不安があることが窺える。)こと、⑤未成年者らの親権者が相手方とされた経緯をみても、未成年者らの親権者となることを主張する相手方に抗告人が譲歩する形となったが、他方で相手方の住居や昼の仕事が決まり、生活が安定するまで未成年者らを監護することとなり現在に至っているので、必ずしも相手方に監護能力があることを認めて親権者が指定されたわけではないこと、⑥相手方が養育に手が掛かる幼児がいながら婚姻期間中に男性チーフと不貞行為を行っており、未成年者らに対する監護意思ないし監護適格を疑わせるものであることが認められる。
そうすると、未成年者Cが5歳、同Dが4歳と若年で、母性の存在が必要であること、不動産会社への再就職が決まり、一定の収入も見込まれることを併せ考慮しても、未成年者らの利益のためには、親権者を相手方から抗告人に変更することが必要であると認められる。
2 相手方は、親権者の指定の後に事情の変更がない限り親権者の変更は認められるべきではない旨主張する。
しかし、親権者の変更の判断において、事情の変更が考慮要素とされるのは、そのような変更もないにもかかわらず親権者の変更を認めることは子の利益に反することがあり得るからであって、あくまで上記考慮要素の1つとして理解すべきであり、最終的には親権者の変更が子の利益のために必要といえるか否かによって決するべきである。
そうすると、抗告人と相手方の監護意思、監護能力、監護の安定性等を比較考慮すれば、親権者を抗告人とすることが未成年者らの利益のために必要であると認められることは前記のとおりである。