1 実務では、請求時からの婚姻費用のみを認める例が多い。
請求時の認定についても、調停・審判では、申立時を請求時としていることが多い。
2 調停・審判ではなく、離婚に伴う財産分与において、過去に遡った婚姻費用が請求された場合、財産分与の中で婚姻費用の清算を行うことが判例上認められている(最判昭和53年11月14日)。
この場合、未払婚姻費用の全額を清算対象とするのか、それとも一部のみを清算対象とするのかが問題となる。
3 この点、原判決は、以下のとおり判断し、未払婚姻費用の遡及請求を過去5年分に限り認めた。
「財産分与において過去の婚姻費用を考慮すべき場合であっても、婚姻費用分担請求権は、通常は、月ごとに支払われるものとして、年以下の期間をもって定めた金銭の給付を目的として期間ごとに発生すべき定期給付債権となるのであって、その性質は、民法169条に従い5年の短期消滅時効にかかる他の定期給付債権と変わらず、5年を超えるような過去の請求権については証拠散逸等の問題が生じかねない。
また、婚姻費用分担については、夫婦によって様々な形態があり得るところ、遠い過去にまで遡って婚姻費用の清算を求めることは、このような形態に基づいて生活してきた夫婦間の事実状態に対する信頼を損ねることになりかねない。
そうすると、過去の婚姻費用を含む財産分与の申立てがなされた場合において、当該申立て時点で5年を超えるような過去の婚姻費用を考慮することは公平でないというべきである。」
高裁も、結論として原判決を維持した。