【名古屋地判平成28年9月30日】非公開会社における新株発行の効力発生日から1年を経過した後に提起された新株発行無効の訴えが、信義則上、所定の提訴期間を徒過して提起したとすることはできず適法であるとされた事例

1 「新株発行無効の訴えの提訴期間は、株式の発行の効力が生じた日から1年以内である(会社法828条1項2号括弧書)。

そして、非公開会社である被告会社における本件新株発行に係る募集株式の引受人である被告Y2が払込期日である平成24年6月4日に所定の払込みをした本件においては、株式の発行の効力が生じた日は、当該払込期日であるから(同法209条1号)、本件新株発行の無効の訴えの提訴期間は、同日から1年以内となる(最高裁判所昭和53年3月28日第三小法廷判決参照)。

ところが、原告が本件新株発行の無効の訴えを提起したのは、上記提訴期間を徒過した後の平成26年6月3日のことである(記録上顕著な事実)。

この点につき、原告は、①本件新株発行は、原告に対する本件新株発行総会決議の招集通知も送付されないまま秘密裏に行われ、しかも、被告会社は、本件新株発行と同時期に行われていた別件訴訟の和解手続において、原告に対し、原告が被告会社の大株主(180株保有)であることを前提とした和解案を提案するなど、本件新株発行は存在しない旨、原告を欺罔していたため、原告は、本件新株発行の事実を知ることができなかったし、知らなかったことにつき何ら帰責事由もないこと、②新株発行の無効の訴えについて提訴期間が制限される趣旨は、法律関係を早期に安定させて取引の安全を図るためであるところ、本件新株発行については、これを無効にしても弊害が生じないといえる事情があること等から、提訴期間の起算日を原告が本件新株発行を知った日とすべきであり、そうでないとしても、禁反言等を理由に、本件新株発行の無効の訴えは、提訴期間の制限との関係において適法に提起されたものであるといえる旨主張する。

そこで検討するに、前示1の認定判断によれば、被告Y2及び被告会社は、遅くとも平成14年6月頃までには、本件株式譲渡合意をなし、これにより原告が本件株式を保有するに至ったことを熟知しながら、平成21年1月頃以降、資金繰りに窮したため、風俗関係の営業をなす者が大株主である企業に対する融資を行わない政府系金融機関から融資を得るとともに、パチンコ台のリサイクル業の選定業者の推薦を受けるため、風俗営業(パチンコ・マージャン)の遊技場経営を業とするaの代表者である原告を被告会社の株主から秘かに排斥しようと考え、前示1(4)のとおり、第12期(平成20年7月1日から平成21年6月30日)の確定申告書別表2「同族会社の判定に関する明細書」に発行済株式の総数200株、被告Y2の保有株式数200株と記載し、小牧税務署長に対し、本件株式譲渡が譲渡担保目的であり、被担保債権の消滅により本件株式の名義を被告Y2に戻すものであるとの虚偽の説明をしたことが認められる。

その上で、前示のとおり、被告会社の代表者である被告Y2は、原告が本件株式を保有することを知りながら、原告に対して本件新株発行総会決議の招集通知等を行うことなく、被告Y2が被告会社の全株式を保有するものとして、当該決議を行った。

しかも、被告Y2は、前示1(4)のとおり、平成21年1月、原告及び原告の実弟を被告会社役員の地位から無断で排斥したほか、同年6月頃以降、原告に対し、被告会社の財務内容や営業成績の報告を行わず、第11期(平成19年7月1日から平成20年6月30日)以降の確定申告書の写しを交付せず、これにより、原告が被告会社の借入状況や株主構成その他の会社の内情を知ることを妨げた(なお、原告が、計算書類等閲覧請求仮処分命令申立事件(名古屋地方裁判所平成23年(ヨ)第70号)において平成23年3月31日に成立した和解により、被告会社から写しの交付を受けた書類は、被告会社の平成21年6月30日現在及び平成22年6月30日現在の各貸借対照表並びに平成20年7月1日から平成21年6月30日まで及び同年7月日から平成22年6月30日までの各損益計算書にすぎない。)。

これらの諸事情を総合すると、被告会社の代表者である被告Y2は、原告を被告会社の株主から排斥する意図の下、原告に知られることなく本件新株発行を行うべく、原告がこれを察知する機会を失わせるための隠蔽工作を繰り返していたものと認められる

また、原告は、本件新株発行の効力発生後である平成24年10月、別件訴訟の控訴審における和解交渉の際、被告会社から、本件新株発行の事実を告げられなかったのみならず、被告会社の発行済株式総数が200株であるとの記載のある被告会社の株式評価額の算定に関する報告書等を交付されており、このような状況の中で、原告が本件新株発行の事実を予想し、又は想定することは容易でなかったといえる

そして、被告会社は、株式の譲渡制限をしている会社であるところ、本件新株発行により株式の発行を受けた者は、被告Y2だけであるから、本件新株発行につき、取引の安全を考慮する必要性がさほど高いとはいえない

また、原告は、本件新株発行の存在を知った平成25年10月3日から1年以内に本件新株発行の無効の訴えを提起しており、訴訟提起が不当に遅延したとはいえない

以上のとおりの本件事実関係の下においては、信義則上、原告が本件新株発行の無効の訴えを所定の提訴期間を徒過して提起したとすることはできず、当該訴えは、適法であると解するのが相当である。」


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