【名古屋地判平成29年2月10日】不採算部門の事業継続と善管注意義務違反

1 「複数の事業部門を有する会社において、ある事業部門で赤字が続いていたとしても、当該事業から撤退しないことが直ちに取締役の善管注意義務違反になるものではなく、当該事業が好転する可能性の有無及び程度、当該事業の会社における位置付けや事業全体に占める割合、当該事業から撤退することによって他の事業に及ぼす影響その他当該事業を撤退することによるメリット及びデメリット等を総合的に考慮して、当該事業を継続するという判断に不合理な点があったか否かを検討して、善管注意義務違反の有無を決するのが相当である。

2 「・・・自転車の内需自体は、少なくとも平成7年頃までは増加傾向にあったこと、Xは、上記のような自転車史上環境の変化に対応するため、自社生産から外部委託生産に全面的に切り替え、デザイン性・機能性を重視した開発を進めるなどして、製造コストを削減し、販売台数を増加させ、また、新規顧客の開拓を図るなどしたこと、Zの事業全体でみると、平成16年7月期までは経常損失を出していたところ、平成17年7月期以降は、1億円以上の経常利益を出すようになったことが認められる。

そうすると、我が国において自転車事業自体が衰退するほかない状況にあったとはいえないところ、Zは、自転車事業部門を存続させるための対策を取り、自転車事業の相応の好転も生じさせてきたということができるのであって、Xが主張するように、およそ自転車事業の損益がプラスになる見込みがないとか、被告取締役らが漫然と自転車事業部門を存続させてきたと評価することはできない。

また、・・・Zの知名度は、自転車事業によるものであるということができるのであって、そのような事業を存続させるということは、経営判断として十分理解できるところである。

加えて、・・・平成23年及び平成25ないし27年に開催されたZの各株主総会において、定款記載の目的から自転車事業を削除することを求める株主提案がされたが、いずれも否決されているところ、同事実によれば、株主の多数は自転車部門の存続を否定していなかったことが認められるから、被告取締役らが自転車事業部門を存続するという経営判断は、株主の多数の意思に沿うものといえる。

以上によれば、その他のXの主張するところを考慮しても、被告取締役らによる自転車事業部門を存続させた経営判断に不合理な点があったとはいえず、被告取締役らに善管注意義務違反は認められないから、被告取締役らは、法423条1項の責任を負うものではない。」


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