【大阪地判平成27年12月18日】新株発行事項の通知の欠缺と新株発行の効力

1 「会社法は、株主割当ての方法による募集株式の発行に当たって、募集株式の引受けの申込期日の2週間前までに、株主に対し、申込期日のほか、金銭の払込期日又は払込期間等の募集事項等を通知しなければならないと規定している(同法202条1項、4項)。

これらの規定は、会社の支配権に関わる持株比率を維持するという既存株主の利益を保護する観点から、申込期日の2週間前までに株主に募集事項等を通知することによって、株主に資金調達を含めた権利行使の機会を与えることを目的とするものであるとともに、株式発行について強い利害関係を有する株主に、法令又は定款に違反する株式発行や著しく不公正な方法による株式発行について、その差止めの機会を付与することを目的とするものと解される。」

2 「本件新株発行については、申込期間と払込期間がいずれも平成26年8月22日を始期とする同一の期間として定められた。

そして、株主である原告に対して本件新株発行に係る通知がされたのは、前記の申込期間及び払込期間の初日に当たる同月22日になってからであり、a社は、同月26日に払込みを済ませて、本件新株発行に係る株式の株主となった(会社法209条1項)。

このような経緯に照らすと、本件における前記通知によって、株主である原告に、2週間前の通知を求めた会社法202条1項及び4項の規定の目的に沿った事前の差止めの機会が付与されていたとは、到底言い難いといわざるを得ない。

したがって、会社法202条1項において定めなければならないとされている申込みの「期日」を期間をもって定めたことが仮に適法であるとしても、本件における前記通知は、同項及び同条4項に反する違法なものというべきである。

そして、既存株主の保護の観点から求められる事前の差止めの機会の付与の重要性に鑑みると、この違法は、株式発行差止請求をしたとしても差止事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、本件新株発行の発行手続における重大な法令違反に当たるものとして、本件新株発行の無効原因になると解するのが相当である(最三小判平成9年1月28日民集51巻1号71頁参照)。」

3 「本件新株発行が、差止事由がないために株式発行差止請求が許容されない場合に当たるか、具体的には、本件新株発行が「著しく不公正な方法」(会社法210条2号)により行われたものでないといえるかについて検討する。

・・・以上のとおり、本件新株発行当時、被告には資金需要自体はあったものの、資金繰りに余裕がなかったとは認め難く、金融機関からの借入れも可能であったと考えられること、本件新株発行が具体的にいかなる資金を調達するために行われたものであるかが明らかでないことなどを総合すると、少なくとも、本件新株発行の主な目的が資金調達にあったというには疑問が残るといわざるを得ない。

・・・以上のとおり、被告の支配権をめぐっては、平成23年頃からD親子とAとの間で深刻な対立があったところ、本件新株発行当時被告を実質的に経営していたD親子は、本件株券引渡等請求訴訟の結果として被告の支配権を確保できない状態となることも想定できたことに加え、前記のとおり、本件新株発行の主な目的が資金調達の点にあったというには疑問が残るといわざるを得ないこと、さらに、被告自身が、本件新株発行に持株比率の抗による膠着状態を防止する目的があった旨の主張をしていることなどを総合すると、本件新株発行の主要な目的は、D親子による被告の支配権確保の点にあったと認めるのが相当である。

以上によれば、本件新株発行は「著しく不公正な方法」により行われたものでないとはいえず、したがって、差止事由がないために株式発行差止請求が許容されない場合に当たるとは認められない。」


パーマリンク

コメントは停止中です。

弁護士法人栗田勇法律事務所 〒420-0858 静岡県静岡市葵区伝馬町9-10NTビル301 TEL 054-271-2231 アクセスページへ ご相談のお申込に関するQ&A お問い合わせはこちら
営業エリア

静岡市葵区・駿河区・清水区、焼津市、藤枝市、島田市、
吉田町、牧之原市、御前崎市、菊川市、掛川市、袋井市、
磐田市、浜松市中区・東区・西区・南区・北区、湖西市、
富士市、富士宮市、裾野市、沼津市、御殿場市、三島市、
熱海市、伊豆の国市