【大阪地判平成29年1月26日】譲渡制限株式の売買価格決定と非流動性ディスカウントの可否

1 「非上場会社の組織再編の場面で反対株主に付与されている株式買取請求権については、その法的性質が『投資の解約を申し入れる権利』であり、その行使により人的会社の社員の退社ないし企業の部分解散(清算)に伴う残余財産分配請求権と実質的に同視し得る権利を取得するものということができるから、反対株主に対しては持分割合に相当する企業価値の分配を保障するのが本則であり、株式の『公正な価格』を決定する際に非流動性ディスカウントを考慮することは相当でないというべきである。」

2 「これに対し、譲渡制限株式の売買価格の決定は、譲渡制限株式を他人に譲渡しようとする株主又はこれを株主から取得した株式取得者(譲渡等承認請求者)からの譲渡等承認請求及び不承認の場合における会社又は指定買取人による買取請求に対し、会社が譲渡等承認をしない旨決定するとともに、会社自らの買取りの決定又は指定買取人の指定をした場合に問題となるものであって、譲渡等承認請求者が譲渡制限株式であることを前提として任意に取引をしているのが通常であること、譲渡等承認請求につき不承認とされる場合の会社又は指定買取人による買取請求をするか否かも譲渡等承認請求者の選択に委ねられており、不承認の場合に株式を保有し続けることも可能であること、会社法116条1項において、発行済株式につき新たに譲渡制限を設ける旨の定款変更が行われる場合の反対株主に対して『公正な価格』による買取請求権が付与されているのに対し、会社法144条による譲渡制限株式の売買価格の決定には及ばないと解される。」

3 「譲渡制限株式の譲渡に係る承認手続に関する会社法136条以下の規定は、小規模な閉鎖会社における会社経営の安定性の維持と株式売却による株主の投下資本回収の機会の保障との両立を図るものであり、会社法144条による株式の売買価格の決定は、投下資本回収という機能を有する譲渡制限株式の取引の場面で問題となるものであるところ、上場会社の株式と比較して非上場会社の株式の流動性(現金化の即時性・容易性)が低く、これを監禁しようとするときには追加的なコストがかかることから、これを株式の評価に際して非流動性ディスカウントとして考慮する取扱いが実務において一般的である。・・・本件鑑定においても・・・対象会社や株主が期待できる利益やキャッシュフローに基づいて評価を行うインカム・アプローチにおいては、対象会社が上場しているか否かによって企業価値の評価が変わるものではないことから、非流動性ディスカウントを行うべき根拠に乏しいとするものであって、対象会社が非上場会社であることによる株式の流動性の制約が株式の価値に何らかの影響を与えるものであること自体は認めているのである。・・・収益還元法・・・による場合、株式の流動性の低いことが直ちに客観的な企業価値自体の減価につながるものではないから、吸収合併等の際の反対株主による株式買取請求の場面において、非流動性ディスカウントを行うことは許されない・・・けれども、譲渡制限株式の取引の場面では、上場会社の株式と比較して流動性が低くこれを換金しようとするときに追加的コストがかかるものであること、これを前提として当事者間で任意に取引がされているのが通常であることからすると、収益還元法による株式の売買価格の評価を行うときであっても、上記追加的コスト(ないしそのリスク)を株式の評価に反映させることには一定の合理性があると考えられる。」


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