【大阪高判平成28年7月15日】株主割当ての方法による募集株式の発行における募集事項等の通知が違法であり、当該新株発行には無効原因があるとされた事例

1 「株主割当ての方法による場合であっても、法令又は定款に違反する株式発行や著しく不公正な方法による株式発行がなされる可能性があることは否定できず、募集株式の発行の差止請求権について定めた会社法210条も、株主割当ての方法によって募集株式が発行される場合を除外していない。

そうである以上、募集事項等の決定に株主総会が一切関与しない、株主割当ての方法による募集株式の発行に当たっては、既存の株主にとって、会社法202条4項に基づく株主に対する募集事項等の通知のみが当該発行について知り得る機会として保障されているものであるから、上記通知の目的は、既存株主に対して、資金調達を含め、募集株式の割当てを受ける権利を行使する機会を付与することのみにとどまるものでなく、法令又は定款に違反する株式発行や著しく不公正な方法による株式発行に対する差止めの機会を付与することもまた、その目的に含まれていると解すべきである。

この観点からみたとき、株主に対して差止めの機会を付与したといえない募集事項等の通知は、同法202条4項、210条の趣旨に反し、違法であると解するのが相当である。」

2 「本件新株発行における、被控訴人に対する募集事項等の通知は、申込期日と定められた平成26年9月5日の2週間前である同年8月21日までになされなければならないのに、これが被控訴人に届いたのは、2週間前に1日足らない同月22日であった上、この日は払込期間の初日に当たる。

募集事項において払込期間を定めた場合、募集株式の引受人は、払込みをした日に株主となり(会社法209条1項2号)、募集株式の発行の効力が発生する。そうなると、もはや差止めを求めることはできなくなるから、株主が払込期間に入ってから通知を受けると、差止めの仮処分決定を得ることが著しく困難となる場合が生じる

実際、本件新株発行において、被控訴人は、平成26年8月22日(金曜日)に募集事項等の通知を受けて、土曜日及び日曜日を挟んだ翌週月曜日の同月25日に差止めの仮処分を申し立て、翌26日に仮処分決定を得ており、差止めの仮処分を得るのに執り得る手立てをほぼ尽くしているといえるが、それでも、仮処分決定の控訴人に対する送達が同月27日になったため、前日の同月26日にa社の払込みにより効力が生じた本件新株発行に対する差止めは奏功しなかったのである

そうすると、本件新株発行における被控訴人に対する募集事項等の通知は、会社法202条4項所定の2週間前の要件を満たさない上、払込期間に入ってからなされたものである点において、株主である被控訴人に対して差止めの機会を付与したといえないものであって、同法202条4項、210条の趣旨に反し、違法であるというべきである。」


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