【大阪高判平成29年4月20日】有限会社の名目的取締役について、およそ経営に関与できる状況がなかったとの事情の下で、当該取締役の第三者に対する損害賠償責任が否定された事例

1 「安愚楽本体は,前記認定のとおりの事業報告書を毎年オーナーに配布していたところ,被告Bはこれを入手したことがあったし,事業報告書が外部への情報発信文書であったから,被告Aもこれを入手する可能性はあったということができる。

そして,事業報告書に記載された契約頭数及び飼養総数を見て,両者の比率が不自然である(契約頭数が多すぎる。)ことに着目すれば,事業報告書からオーナー制度の運営が非正常であることを察知できる可能性は否定できない。

しかし,そのように察知した被告Aや被告Bが,法律違反の営業がされないようオーナー制度に関する情報を社内で収集しようとしても,同被告らの地位や上記の経営の実情に照らせば,同被告らにおいて,オーナー契約の実情,特に繁殖牛不足がいつ頃始まり,どの程度まで深刻化しているのかを知り,安愚楽本体が法律違反の営業をしないよう会社の業務執行を管理,統制すべき職務上の義務を果たすことは極めて困難であったといわなければならず,同被告らには,上記職務を行うにつき,悪意はもとより,重大な過失(容易に上記職務上の義務を果たすことができたのにそれさえもしなかった不作為)があったということはできない

したがって,旧商法266条の3第1項に基づく原告らの被告A及び被告Bに対する請求は理由がない。」

2 「非公開会社が大会社に該当した場合,代表取締役及び株主は,速やかに上記手続を履践して会計監査人と通常監査役を選任すべきであり,それがされないのは選任懈怠である。

会社法は,過料の制裁により間接的に選任懈怠の早期解消を促していると解されるが(会社法976条22号),それ以上に,選任懈怠が生じた場合,会計限定監査役に通常監査役と同様の職責(業務監査をも行う職責)を負わせていると解釈し,会社法429条1項を適用するに当たり,通常監査役と同じ基準でその損害賠償責任を議論することは相当でないと考える。その理由は次のとおりである。

まず,監査役就任契約により監査権限が会計監査に限定されている者が,業務監査の職責まで負わせられる契約上の根拠がない

また,業務監査を行うことを予定して選任されたのではない会計限定監査役に業務監査の職責を負わせることは,会社にとって不足であるばかりでなく,業務監査の職責を果たさない場合の法的責任(会社法423条及び429条)が生じることになるため会計限定監査役にとっても過酷である。

上述したとおり,大会社に該当する場合,会計監査人と監査役を選任した上,それぞれの業務を分業することになるが,これらの選任までの間,会計限定監査役が,これらの者が行うべき職務をひとりで行うことには,少々無理がある。

会社法は,その336条4項3号において,通常監査役を置く必要が生じた場合,会計限定監査役の任期を終わらせることにしており,会計限定監査役に通常監査役の職責を果たすことを当然のこととして求めているわけではないと考える。」


パーマリンク

コメントは停止中です。

弁護士法人栗田勇法律事務所 〒420-0858 静岡県静岡市葵区伝馬町9-10NTビル301 TEL 054-271-2231 アクセスページへ ご相談のお申込に関するQ&A お問い合わせはこちら
営業エリア

静岡市葵区・駿河区・清水区、焼津市、藤枝市、島田市、
吉田町、牧之原市、御前崎市、菊川市、掛川市、袋井市、
磐田市、浜松市中区・東区・西区・南区・北区、湖西市、
富士市、富士宮市、裾野市、沼津市、御殿場市、三島市、
熱海市、伊豆の国市