【山口地宇部支決平成26年12月4日】著しく不公正な方法による募集株式の発行

1 「当事者の主張は、会社法210条2号に定める「著しく不公正な方法」の解釈適用に当たっては、いわゆる主要目的ルール、すなわち、会社の支配権に争いがあり、既存株主の持ち株比率が重大な影響を及ぼすような新株が発行され、それが第三者に割り当てられる場合に、その新株発行が、既存株主の持ち株比率を低下させ、現経営陣の支配権を維持することを主要の目的としたものであると認められる場合を指すとの点では一致し、当裁判所としても上記解釈については相当と解する。」

2 「債務者には、継続期間こそ短いものの、債権者とAら現経営陣との間で、会社経営権の帰属について深刻な争いが生じ、本件新株発行は既存株主である債権者に重大な影響を及ぼす上、現状では解任必至のAらが現状を維持し、経営権を保持し続ける可能性が高くなるもので、その他、債権者の解職と増資の決定、増資の決定から定時株主総会の開催がいずれも短いこと(なお、債権者は、手続の異常性を主張し、この点、第三者委員会の基準価格の判断が短期間で変化し、有価証券届出書ではその最終意見の反映がされていない、あるいは、このような事情もあって同届出書を提出した翌日にd社からの人員の派遣の内容が変わるといった、単なる事務過誤等では説明のできない点が複数認められるものの、第三者委員会の構成が中立でないなどの事実の疎明はないのであって、特定の意図を前提とした行為と認めるには足りない。)にも鑑みると、支配権の維持を目的とした増資であることが強く推認される。」

3 「債務者の主張にも一部あるように、株式会社は利潤追求に目的があり、その重要な手段として、増資や借入れ等により資金確保を図ることは、原則自由であって、既存株主の全体に対する株式の保有割合が絶対的に保護されるものではない。主要目的ルールの適用に当たっても、現経営陣に増資による支配権維持の目的が認められたとしても、それが増資等の資金確保の際の副産物にすぎない、あるいは、副産物に止まるとの判断が十分に否定できない場合には、不当目的達成の目的に優越性はないのであるから、原則に従い新株発行は制約されるものとは解されない。」

4 「本件申立てについては、会社支配権に争いが存在し、本件新株発行によって既存株主である債権者の持株比率に重大な影響を及ぼす可能性の高い数の新株が発行される一方、債務者の現在の経営陣であるAらは、喫緊に迫った定例株主総会あるいは債権者が請求した臨時株主総会の開催に備え、支配権を維持するため本件新株発行を行う必要性が主観的にも客観的にも高い(この点、債務者は、Aらが自身の保身で行動しているものではなく、他の株主、従業員等のため行動していると主張し、確かにそのような要素も否定できないと当裁判所も考えるが、そうであればこそ、Aらは債権者を解職した目的を最後まで完遂する必要性に迫られているといえるし、債権者が主張するように、この点があるからといって新株発行により支配権を維持することが正当化されるというだけの根拠にはならない。)。

他方で、債務者においては、資金調達の必要性のある経営状態であることは肯認できるものの、債務者において説明するような、資金の要急性や、計画の具体性があったとはいい難い。本件新株発行が債務者の現経営陣の支配権維持を主要目的とするものであったとの疎明は十分というべきであり、被保全権利の存在が認められる。」

5 「本件新株発行の主な目的がAらの支配権の維持であることが疎明されているところ、本件新株発行の払込期間は12月5日であるから、債権者が現在準備している本案を提起することによって対応することは不可能と認められるし、その結果としての債権者の地位の変動やこれによる不利益は大きい。保全の必要性の存在は十分な疎明がある。」


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