1 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、再審原告として上記確定判決に対する再審の訴えを提起したとしても、上記確定判決に係る訴訟の当事者ではない以上、上記訴訟の本案についての訴訟行為をすることはできず、上記確定判決の判断を左右できる地位にはない。
そのため、上記第三者は、上記確定判決に対する再審の訴えを提起してもその目的を達することができず、当然には上記再審の訴えの原告適格を有するということはできない。
しかし、上記第三者が上記再審の訴えを提起するとともに独立当事者参加の申出をした場合には、上記第三者は、再審開始の決定が確定した後、当該独立当事者参加に係る訴訟行為をすることによって、合一確定の要請を介し、上記確定判決の判断を左右することができるようになる。
なお、上記の場合には、再審開始の決定がされれば確定判決に係る訴訟の審理がされることになるから、独立当事者参加の申出をするために必要とされる訴訟係属があるということができる。
そうであれば、新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになるというべきである。
2 当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならないのであり(民訴法2条)、とりわけ、新株発行の無効の訴えの被告適格が与えられた株式会社は、事実上、上記確定判決の効力を受ける第三者に代わって手続に関与するという立場にもあることから、上記株式会社には、上記第三者の利益に配慮し、より一層、信義に従った訴訟活動をすることが求められるところである。
そうすると、上記株式会社による訴訟活動がおよそいかなるものであったとしても、上記第三者が後に上記確定判決の効力を一切争うことができないと解することは、手続保障の観点から是認することはできないのであって、上記株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には、上記確定判決には、民訴法338条1項3号の再審事由があるというべきである。
本件において、抗告人は、前訴の係属前から、相手方Y1に対して内容証明郵便により本件株式発行の有効性を主張するなどしており、仮に前訴の係属を知れば、自らの権利を守るために前訴に参加するなどして相手方Y2による本件株式発行の無効を求める請求を争うことが明らかな状況にあり、かつ、相手方Y1はそのような状況にあることを十分に認識していたということができる。
それにもかかわらず、相手方Y1は、前訴において、相手方Y2の請求を全く争わず、かえって、請求原因事実の追加立証を求める受訴裁判所の訴訟指揮に対し、自ら請求原因事実を裏付ける書証を提出したほか、前訴の係属を知らない抗告人に対して前訴の係属を知らせることが容易であったにもかかわらず、これを知らせなかった。
その結果、抗告人は、前訴に参加するなどして本件株式発行の無効を求める請求を争う機会を逸したものである。
このような一連の経緯に鑑みると、前訴における相手方Y1の訴訟活動は会社法により被告適格を与えられた者によるものとして著しく信義に反しており、抗告人に前訴判決の効力を及ぼすことは手続保障の観点から看過することができないものとして、前訴判決には民訴法338条1項3号の再審事由が存在するとみる余地があるというべきである。」