「本件では,定時株主総会の招集通知に際して提供されるべき計算書類の一部である個別注記表,事業報告が欠けており,計算書類の附属明細書の閲覧,謄本の交付要求が拒絶され,法定備置書類の備置きの不備があり,これらは本件株主総会の招集手続における瑕疵に当たるが,個別注記表については本件株主総会に先立って原告に送付されており,定時株主総会の招集通知に際して提供されるべき計算書類については追完されたといえる。
もっとも,その他の点についてはなお瑕疵が認められることに加え,決算に関する監査報告書の記載は,株主が決算を承認するか否かを判断するに当たって重要な参考資料となるところ,第35期の決算に関して作成された監査報告書には,現在の会社の対応では監査不能である旨が記載されているのみであり,実質的には監査報告の提供があったとは言い難く,このことも踏まえれば,別紙決議目録記載1の第35期の計算書類の承認に関する株主の実質的な準備は不能であったというべきである。
そうすると,本件決議1に関する瑕疵は重大であるから,決議への影響の有無を論ずるまでもなく取り消されるべきである。
しかしながら,株主総会決議取消訴訟において,決議取消原因となる瑕疵は,当該瑕疵が目的となっている決議に及ぶことによって当該決議が取り消されるのであるから,取消しが求められている決議と関連するものに限られるべきであるところ,上記の招集手続の瑕疵は,本件決議2及び本件決議3に関連するものとはいえないから,本件決議2及び本件決議3との関係では決議取消事由とならない。
なお,被告は,原告の主張は権利濫用である,平成26年6月28日の株主総会において,第35期の決算の承認がされたことから,本件株主総会における瑕疵は治癒された,などと主張するが,原告の主張が権利の濫用に当たるとまでは認められないし,また,平成26年6月28日の決議の内容は,第35期の決算を承認するというものであり,再度決議がされたことにより,決算が有効となる余地はあるとしても,当該決議は本件株主総会の決議を追認するようなものではないから,これによって,本件株主総会決議の取消原因が遡及的に消滅し,その瑕疵が治癒されたということはできない。」