【東京地判平成27年6月29日】定款変更により退任となった取締役の損害賠償

1 「原告らが現在もなお被告の取締役の地位にあるといえるか否かは,取締役の任期を短縮する旨の本件定款変更によって原告らが被告の取締役から当然に退任することになるかに関わるところ,取締役の任期途中において,その任期を短縮する旨の定款変更がなされた場合,その変更後の定款は在任中の取締役に対して当然に適用されると解することが相当であり,その変更後の任期によれば,すでに取締役の任期が満了している者については,上記定款変更の効力発生時において取締役から当然に退任すると解することが相当である。

けだし,上記の定款変更は,取締役の解任と同様の効果を発生させるものであるところ,取締役はいつでも株主総会の決議によって解任することができるとされており(会社法339条1項),他方,定款変更によって当然に退任させられた取締役の保護は,解任の場合と同様に,損害賠償によって図れば足りるというべきだからである。」

2 「会社法339条2項は,株主総会の決議によって解任された取締役は,その解任について正当な理由がある場合を除き,会社に対し,解任によって生じた損害の賠償を請求することができる旨定めているところ,その趣旨は,取締役の任期途中に任期を短縮する旨の定款変更がなされて本来の任期前に取締役から退任させられ,その後,取締役として再任されることがなかった者についても同様に当てはまるというべきであるから,そのような取締役は,会社が当該取締役を再任しなかったことについて正当な理由がある場合を除き,会社に対し,会社法339条2項の類推適用により,再任されなかったことによって生じた損害の賠償を請求することができると解すべきである。」

3 「被告が原告らを取締役として再任しなかったことについて,正当な理由があるか否かについて検討する。

被告は,(ア) 平成23年1月20日時点において,被告の取締役全員が親族関係にあり,取締役会が形骸化していたため,その活性化を図り,経営体質を強化して,経営環境の急激な変化に対応する必要があったこと,(イ) 原告らから,① Cの所有する被告の株式を被告等が買い取るべきである,② 被告の経営が安定しているうちに被告を売却した方が良い,といった意見や,③ 個人的な感情に基づく理由のない人事提案がなされたことによって,その取締役会において実質的な経営についての話ができない状況となっていたことから,原告らを取締役として再任せず,その親族以外の者を新たに取締役として選任した旨主張する。

しかしながら,取締役全員が親族関係にあって取締役会が形骸化していたというのであれば,新たに親族以外の者を取締役として追加すれば足りるのであって,原告らを取締役として再任しないことが正当化されるとはいえない((ア)の点)。

また,原告らから被告に対して上記(イ)①ないし③の提案がなされたことを認めるに足りる証拠はないし,仮にこれらの提案がなされていたとしても,上記①,②については,それらの提案が被告にとって違法,不当な内容であったとはいえず,上記③については,これが個人的な感情に基づく理由のない提案であったことを認めるに足りる証拠はない。

したがって,いずれにしても被告の上記主張は,原告らを取締役に再任しなかったことについての正当な理由にはならないというべきである。」

4 「原告らは,原告らが取締役を退任した日の翌日である平成23年1月21日から本件定款変更前の本来の任期の終期である平成28年6月末日までの間の得べかりし取締役報酬相当額が損害となる旨主張する。

しかしながら,平成23年1月から平成28年6月までの5年5か月以上もの長期間にわたって,被告の経営状況や原告らの取締役の職務内容に変化がまったくないとは考えがたく,原告らが平成28年6月までの間に上記の月額報酬を受領し続けることができたと推認することは困難であって,その損害額の算定期間は,原告らが退任した日の翌日から2年間に限定することが相当である。」


パーマリンク

コメントは停止中です。

弁護士法人栗田勇法律事務所 〒420-0858 静岡県静岡市葵区伝馬町9-10NTビル301 TEL 054-271-2231 アクセスページへ ご相談のお申込に関するQ&A お問い合わせはこちら
営業エリア

静岡市葵区・駿河区・清水区、焼津市、藤枝市、島田市、
吉田町、牧之原市、御前崎市、菊川市、掛川市、袋井市、
磐田市、浜松市中区・東区・西区・南区・北区、湖西市、
富士市、富士宮市、裾野市、沼津市、御殿場市、三島市、
熱海市、伊豆の国市