【東京地判平成27年9月7日】残余財産分配と決算報告承認決議無効

1 「会社法109条2項は,公開会社でない株式会社は,残余財産の分配を受ける権利(105条1項2号)に関する事項について,株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる旨規定するが,その趣旨は,いわゆる閉鎖会社においては,株主の異動が乏しく,株主相互の関係が緊密であることが通常であることから,株主に着目して異なる取扱いを認めるニーズがあるとともに,これを認めることにより特段の不都合が生じることはないと考えられるためであると解される。

もっとも,上記のような残余財産の分配を受ける権利に関する属人的な定めは,株主としての重要な権利に関わるものであるから,その定めを創設又は変更するための定款変更決議については,総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上の多数によることが必要とされているものと解される(会社法309条4項)。」

2 「そうすると,残余財産の分配に関する属人的な定めについて,定款変更という形式がとられなくても,全株主が同意している場合などには,定款変更のための特殊決議があったものと同視することができるし,他に権利を害される株主がいないのであるから,会社法109条2項の趣旨に反するところはなく,有効であると解すべきである。

(なお,このように解さないで,前記の属人的な定めについて,全株主が同意しているのに,定款変更という形式がとられなかったことのみをもって,その効力が否定されると解することは,禁反言の見地から相当でないと思われる。)

3 「会社法502条は,株主の残余財産分配請求権が会社債権者に劣後するという本質的なことを明らかする規定であり,同条ただし書は,迅速な清算手続のために,相当財産を留保することによって債権者が株主に優先することを確保した場合に限って,債務弁済前でも残余財産の分配を認めたものと解される。

すなわち,同条ただし書は,債権者の主張する債権の存否又は額について争いがあるにもかかわらず,清算会社においてこれがないものとして残余財産を分配した後に,上記債権の存在及び額が確定した場合には,債権者の優先性が害されることとなるが,そのような事態を避ける趣旨であると解される。

そうすると,清算会社は,清算会社に対する債権の存在を主張する者がいる場合には,債権者が債権の存在及び額についての根拠を全く示さないなどといった特段の事情がない限り,その存否及び額が確定するまでは,相当財産を留保しない限り,株主に対する残余財産の分配を行ってはならず,その存否及び額を確定することに努めるべきものと考えられる。

本件についてみると,原告はその主張する経費に係る債権についての根拠及び額について,具体的に主張していることが認められるし,被告の主張を踏まえても,これが被告の負担すべき債務となる余地がないことが明らかであるとまでは認められない。

以上によれば,被告は,原告との間でその存否及び額について争いのある債権に係る債務についてその弁済のための財産を留保することなく,残余財産の分配をしたこととなり,この点において,会社法502条に違反するといわざるを得ない

そして,会社法502条に違反する残余財産の分配をしたことを内容とする決算報告書を承認する決議は,その内容が法令に違反するものと解される。

よって,本件決議には無効事由があると認められる。」


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