【東京地判平成28年1月28日】株式買取請求の撤回

1 「原告らは,株式買取請求の撤回により被告の株主たる地位を回復したが,株券の交付を受けていないところ,被告の株式は日本瓦斯の株式と交換されており,その効力は原告らにも及んでいる,あるいは被告の株式に代えて日本瓦斯の株式を引き渡すように求める変更請求権を有しているから原告らは日本瓦斯の株主となっていると主張する。

株式交換がされた場合,完全親会社は,効力発生日に完全子会社の発行済株式を取得し,完全子会社の株主は,効力発生日に完全親会社の株主となる(会社法769条1項,3項1号)。

一方,株式交換に反対する完全子会社の株主は,完全子会社に対し,株式買取請求を行うことができ(同法785条1項),その株式買取請求に係る株式の買取りは,効力発生日にその効力を生じ(旧会社法786条5項),株式買取請求を行った株主が完全親会社の株主となることはない

株式買取請求がされた後,株式交換の効力が生じたときは,当該請求をした完全子会社の株主が有する株式は,その効力発生日に完全子会社を経て完全親会社に移転することとなる。

そして,株式交換の効力発生日後に株式買取請求が撤回された場合には,完全子会社には原状回復義務として完全子会社の株式を返還する義務が生ずるが,完全親会社が完全子会社の株式を取得していることから,当該義務は履行不能となり,結局,当該義務を負っていた完全子会社は,株式買取請求に係る株式の代金相当額の金銭を返還する義務を負うことになる。

したがって,株式買取請求の撤回により,原告らが被告の株主としての地位を回復し,これを前提として日本瓦斯の株主の地位にあることを根拠とする原告らの主位的請求は理由がない。」

2 「この点,原告らは,株式の売買は種類物の売買であり,その引渡義務は原則として履行不能にはならないなどと主張する。

しかし,完全子会社の株主が有する株式は,その効力発生日に株式買取請求に係る株式を含めて完全子会社を経て完全親会社に移転する。

株式交換制度は,組織再編行為の中で完全親子関係を作出する手法として会社法上定められている制度であり,完全親子関係が作出された後になって株式買取請求の撤回によってその完全親子関係を否定する効力をもたらすことは会社法上予定されていないものと解される。

そうすると,完全子会社が完全親会社から子会社の株式を入手し株主に引き渡すことは社会通念上あるいは取引観念上その実現を期待し得ず,履行不能になるものというべきである。

したがって,原告らの主張は採用できない。」

3 「また,原告らは,株式買取請求をした株主は,その対価としての金銭を受け取る権利を有するところ,これを撤回しても金銭しか受け取れないのであれば,撤回をする意味がなく,撤回を認めた条文は無意味な条文ということになるとも主張するが,株式買取請求の撤回により株式交換前の株式の引渡しを受けることはできないことは,上記判示のとおりであり,原告らの指摘を踏まえても,結論を左右しない。」

4 「株式買取請求を撤回した場合,撤回の時点において被告の株式の原物返還は不能であり,株主は金銭債権を取得することになる。

そこで,撤回時を基準として,その時点における被告の株式の価格相当額を返還すべきである。

具体的には,本件株式交換において被告の株式1株につき日本瓦斯の株式が0.34株の割合で割り当てられているところ,この交換比率に特に不当と認めるべき事情も,他に考慮すべき特段の事情も認められないことからすれば,本件においては,株式買取請求を撤回した時点における日本瓦斯の市場株価を前記交換比率で換算して算出した金額をもって代金相当額と定めるのが合理的である。」


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