【東京地判平成28年4月21日】全部取得条項付種類株式の取得に反対した株主が会社から株式の元本金額に相当する金員の支払を受け、遅滞なく異議を述べなかった場合、同支払額は元本に充当する合意が成立したとされた事例

1 「改正前会社法172条2項は,株式会社は同条1項に基づき裁判所の決定した価格に対する取得日後の年6分の利率により算定した利息をも支払わなければならないとし,いつまでの利息を支払わなければならないのかは明示していない。

この点,同条2項の趣旨とするところは,株式会社は,株主総会の決議によって,取得日に全部取得条項付種類株式の全部を取得し,それ以降,同株式に係る経済的価値を把握することになり,他方で,同条1項に基づく申立てをした元株主は,株式会社に対し,同株式そのものの価値に相当する,裁判所の決定する公正な価格の支払請求権である取得価格請求権を取得するが,取得日以降は,同株式に係る配当やこれを売却して得た金銭を運用することにより得られる金銭等,同株式そのものの価値を保持していることから生み出される利益を取得できないので,上記価格を元本とする同株式を取得された後の利息請求権を取得するとすることにより,元株主の保護を図ろうとしたものと解される

そうすると,取得価格請求権は,同項の裁判所の決定が確定して初めて確定的に発生するものと解されるところ,上記決定が確定する前であっても,元株主が,株式会社から,全部取得条項付種類株式そのものの価値に相当する金銭の支払を受けた場合には,元株主において,これに加えて同条2項の利息を取得する合理的な理由はなく,同項は,このような場合においてもなお株式会社に対して上記利息の支払を命ずるものとは解されないから,後に取得価格請求権が確定的に発生しても,上記支払を受けた時点以降,上記利息は発生しないと解するのが相当である。」

2 「被告は,原告との間で,原告に対して支払った294万円を元本に相当する本件株式の価格に充当する旨の合意が成立したと主張する。

この点,被告は,原告に対し,前記のとおり,本件価格決定事件が確定したときには当該取得価格請求権の支払に充てる意思を黙示に表示して,本件株式に係る端数株式売却代金として本件株式の価格と同額である294万円を支払っているところ,このような事情の下では,被告において上記支払が本件株式の価格の元本に相当する部分に充当する黙示の意思表示もしたものと認められる

そして,原告は,本件価格決定事件を申し立てつつ(この申立てに当たっては,原告は,本件価格決定事件が確定したときは,本件株式の価格とともに改正前会社法172条2項の利息を取得できると認識していたものと認められる。),前記2(1)のとおりこの金銭を受領しているところ,弁論の全趣旨によれば,その後,被告の上記支払について遅滞なく異議を述べていないことが認められる。

これらの事情に被告も指摘する大審院判決の趣旨をも踏まえると,上記支払の際,本件価格決定事件が確定したときには上記294万円を元本に相当する本件株式の価格に充当する旨の黙示の合意が成立したと認めるのが相当であり,かかる認定を覆すに足りる証拠はない。」


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